いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「月とライカと吸血姫6 月面着陸編・上」牧野圭祐(ガガガ文庫)

停滞気味の共和国宇宙開発計画。それを隠蔽したい政府による無理な有人宇宙飛行計画が、ミハイルを殺した。怒りと悲しみに震えるレフたちが取った行動は、かつてコローヴィンが極秘に記した、月着陸への共和国と連合王国による共同計画を、世界向けて非合法に「暴露」すること。思惑通りゲルギエフ連合王国との月着陸共同計画を宣言、ついに月への道が開かれた。そしてANSAでの飛行訓練のために連合王国へ渡ったレフとイリナたちを迎えるのは、宇宙飛行士たちの厳しい洗礼!。偉大なるクライマックスへ、「月面着陸編」上巻ついに完成!


冷戦中のアメリカ合衆国ソビエト連邦による宇宙開発競争をモチーフにした本作。これまでは大体史実に沿って進んできたが、この6巻からは共同開発というifルートに突入する。
元々、宇宙×吸血鬼×ボーイミーツガールでロマン溢れる物語だが、近代史のifが加わってさらにパワーアップ。どこまで男の子心をくすぐってくるんだ。
但し、この巻は前編で本番の月面着陸はまだ先とあって、計画書で概要を提示しつつ、ストーリーはスピーディーかつ淡々と進む。
政治に足を引っ張られそうな懸念と、共和国のきな臭さがずっと付きまとうのは相変らずだが、ようやく話が前に進むことへの期待と、現場レベルでは技術者も宇宙飛行士も協力しあえる姿が見えるので、期待一割不安九割から期待四割不安六割くらいまでは回復し、後編への期待が膨らんでいく。まあ、続く直前に不安が七~八割に復活する出来事が起こるわけだが。。。
そんな中で共和国と連合王国の主人公二組は、
窮地を機に一気に距離を縮めたカイエとバートと、表面上はいつも通りでも見えない溝が出来ているように感じるレフとイリナで対照的。
特にイリナは物憂げな様子で意味深な言葉を繰り返していて、宇宙へ飛んだ時に何か良からぬことを考えていそうな怖さがある。こんな様子じゃレフも距離を縮める勇気は持てないか。でも踏み込めるのもレフだけなんだよなあ。飛ぶ前に本心をぶつけてくれればいいけど……。
次回、月面着陸本番。レフの無事とイリナの幸せを願うが、何も起きないはずもなく。今回これと言って活躍が無かったレフが、本番は男を見せてくれることに期待したい。