いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「赤くない糸で結ばれている」筏田かつら(角川文庫)

高校2年生の中川は、友人にすすめられ久しぶりに書店に立ち寄った。POPにひかれ、手に取った本を持って行ったレジで、対応してくれた店員に一目ぼれしてしまう。彼女には「あつみ」とあった。それ以降、1冊読み終わるたびに、本を買う日々が続いていたが……。ほか、ラジオ番組の投稿者が気になる秀才、高校時代の同級生に翻弄される女子大生、同性を崇める女子中学生など全5編を収録した、究極の切なさを描く短編集。


憧れ、興味、淡い恋慕。人と人との繋がりが解けて消えていく瞬間を切り取った切なく儚い短編集。
また、全五話すべての話が前後の話と、誰かもしくはどこかで繋がっているのも特徴で、そういう意味でも人の縁の機微を描く作品だった。
これを赤くない糸とするならば、赤い糸とはなんと特別で強いものか。



1 愛しの本屋さん
内容:普段本を読まない高校生男子が書店の女性店員に一目惚れ

純朴高校生のテンパり具合が凄くリアルで、少し近づけたと思ったらふっと消えてしまう儚くままならない終わり方綺麗で、甘酸っぱくて大好きな話。これぞ青春。友人二人の友達甲斐もGood。



2 年末狂騒曲
内容:変な投稿ばかりする同い年のラジオリスナーが気になる秀才男子

恋の話だと思っていたので、その気がまるで無くて面食らった。一応熱々熟年夫婦が出て来るけど。
年食っても勉強が出来ても男はバカってことだね。



3 そんなアイツに騙されて
内容:持てない女子大生が、高校時代に人気だった男子に誘われて……。

イケメンクズ男子倉本の下の名前はヒロシか?w
彼女の方が渚にたたずまないで、バカヤローと叫んで早々に立ち去りそうだけど。
見ず知らずの男子高校生と罵り合って友達になっちゃうラストが「ねーよ!」と思いつつも大好き。
ところで、このどうみても作者の過去作のヒロインの人は、なんでペー子呼ばわりされてんだ? 苗字の頭が北だから? いや女子大生の発想じゃないか。



4 「モスキート」
内容:女子中学生の危うい友情

これだけ毛色が全く違うサイコホラー。
執着も一つの繋がりであって、悲劇も人の縁の一つの終わり方ではあるが……。



5 栞のテーマ
内容:第一話の書店員サイド

冒頭で、一つ浮いてる四話目の謎が解けるが割とどうでもいい(おい
七年後の出来事がこれ以上ない美しいラストだった。
彼の人生に影響を与えていた嬉しさと、一つの縁が消えていく切なさで、何とも言えない余韻。好き。