いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「学芸員・西紋寺唱真の呪術蒐集録2」峰守ひろかず(メディアワークス文庫)

北鎌倉にあるアンティーク博物館。その主任学芸員である西紋寺唱真は、実践的呪術を研究する、呪いの専門家だ。
実習を終えた大学生の宇河琴美と西紋寺のもとに持ち込まれた奇妙な出来事。呪いの絵馬に名前を書かれた人物が祟りに見舞われたというのだ。
調査のすえ二人はある「呪術」に辿り着く。膨大な知識に裏打ちされたそれは、かつて西紋寺が発案し、その危険性から自ら封印したものと酷似していた。さらに呪いの方法を斡旋する謎の「コンサルタント」の存在が浮上し――。


呪いを専門に研究する変わった学芸員の西紋寺唱真と、実習生からバイトになった女子大生宇河琴美が、呪いに関する事件に巻き込まれたり首を突っ込んだりする、妖怪が出てこない珍しい峰守作品第二巻。
珍しいと言えば、今作のヒーロー西紋寺唱真は歴代の峰守作品ヒーロー役と比べて安心感が無いなと。強くもないのに興味だけで死地に突っ込んで行きそうな危うさがある(絶対城先輩も強くはなかったけど強キャラ感があった)。正義感だけで突っ走りそうな女性主人公と合わせてハラハラ感が二倍。
そんな危なっかしい二人は、コンビ感が増していた。
1巻も凸凹なのにいいコンビだと感じていたが、唱真から琴美への信頼度が上がり、琴美から唱真への遠慮が薄くなっていて、会話が気安くより楽しくなっている。
メインテーマの呪いに関しては、科学的な見地で紐解いていくのが興味深い。主に古代中国の呪術・蠱毒を、ヘビやウミウシが捕食生物の毒を取り込む習性を使って説明実践する第一話は特に説得力があって、話としても面白い。真面目そうなのにやってることがアグレッシブな蒼生ちゃん、また出てこないかな。いいキャラだった。
また、第一話から第三話の一見無関係な事件や出来事が、第四話で綺麗に収束していく気持ちよさは本作でも健在で、二巻も文句なしで面白かった。