いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか17」大森藤ノ(GA文庫)





「ひれ伏しなさい」





これは少年が堕ち、美神が騙る、
──【眷族の偽典(ファミリア・ミィス)】──


ベルにフラれたシル=フレイヤが、スキル【憧憬一途】により『魅了』にかからないベルを手に入れるために取った方法とは、周り全てを魅了し事実を書き換えることで、ベルを孤立させ精神的に追い詰め自分に依存させようとする卑劣な罠だった。フラれた女が自棄になる、女性って怖い!な17巻。
フレイヤが取ったえげつない方法に、欲しいもののために理性が抑えられない幼児性に、事の大きさへの恐怖よりも居たたまれなさが勝ってしまう、そんな物語だった。【フレイヤ・ファミリア】メンバーの、主にヘグニ(中二病エルフ)の所為でオタサーの姫が癇癪を起したような感じになってしまっていたのも大きい。ヘグニの罪は重い。
これでフレイヤの計画が完璧であったなら憎むべき敵になっていたのに、話が進むに従ってあちこちに出て来る甘さと綻びと、フレイヤ本人の葛藤で、どうにも憎めなくなっているのがズルい。
一方、仕掛けられたベルの方はヘタレ力と童貞力を回避能力に転換する、スイッチが入る前のいつものベル。終盤に本性を現しかけたけど、話が続いたので本領発揮は次だろう。成り行きで最強ファミリアに稽古をつけてもらった実績は次に生きそう。
ベルの本人ではないが、『魅了』が解けた後のベルと関係の深い人物たちの慟哭に、これまでベルがしてきたことの大きさと意味を感じられるシーンは良かった。ファミリアメンバーだけでなく、他所の冒険者や神様も嘆くシーンは感動的。
で、そんな活躍が少なかったベルに変わって大活躍だったのがまさかのヘスティア様。
ヘルメスやウラノスの策についていける頭の良さに、場面場面で適切に動く判断力。そして舞の神々しさ。駄女神様とか借金女王とかただのマスコットとか紐とかラブコメのお邪魔キャラとか思っててすいませんでしたー!
そして事態は決着せずに次回へ。
『戦争遊戯』がメインだが、どうやらフレイヤすらもベルの攻略対象になっている様子なので、過去最も面倒くさい年上の女性vs【年上魅了(マダムキラー)】ベルの頂上決戦も見逃せない。