いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「三角の距離は限りないゼロ7」岬鷺宮(電撃文庫)

一人の中にいる二人の少女「秋玻」と「春珂」。彼女たちと恋するなかで、僕は「自分」がわからなくなってしまう。
――僕って、どんなやつだったっけ?
明るい作り物の僕と、その裏にいた繊細な、本物の僕。……本当にそうか?
春休み。再び明るくなった僕は、支えてくれる秋玻、春珂と一緒に、自分を探しはじめる。そして入れ替わりの時間が短くなってゆく彼女たちにも、同じように自分への疑問に向き合うときが来る。
「――わたしたちって、二重人格って、なんなんだろう?」
二重人格の彼女とともに過ごした一年を辿り終えたそのとき、僕は終わりゆく「彼女たち」の最後の願いに触れる――。
僕と彼女と彼女が紡ぐ、切なく愛しい、三角関係恋物語


自らも二重人格が終わりそうで不安定な中、自分を見失った矢野を元に戻すために奔走する秋玻と春珂。最終章前編。

【悲報】矢野氏壊れる(4巻以来2回目)
ここまで来ると切なさも愛しさも感じない。あるのは負の連鎖で大変だという同情と、何を読まされているんだろうという困惑。
恋愛小説を手に取ったと思ったら中身は精神科の症例だった、みたいな。(もちろん精神科の症例なんて読んだことがないので勝手な想像です)
二重人格の彼女をヒロインにして「自分とは何か」という思春期らしい悩みを書く作品だとは認識していたけど、恋愛要素よりもそちらの方に突き抜けてしまって、恋愛要素ゼロのまま重苦しいシリアスな話ばかりしていた。春珂や霧香のゆるい口調でラノベらしさを出そうとしているのが痛々しく感じてしまうくらいに。
それにしても矢野君は、ここまで自我が不安定だと幼少期の自我の形成時期の問題、親のネグレクトなどを疑ってしまう。現状ではそんな感じの両親には思えないけれど。とりあえず高校生が自分たちでどうにかする段階の問題ではないよね、これ。
そんな精神的に不安定な矢野に追い打ちをかけるよう、二重人格の終わりを迎え、矢野にとんでもない問い投げかけてしまう秋玻/春珂。作者は鬼かな? ショック療法になればいいけど、普通に矢野君精神ぶっ壊れそう。「私を殺して」というセカイ系のヒロインは、それを覆すだけの気概がある主人公じゃないと映えないと思うんだ。
次回最終巻。結末が気になるので最後まで読むつもりでいるが、もう恋愛小説的な面白さを見出すのは無理そうだ。