いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「君に恋をするなんて、ありえないはずだった 課外授業は終わらない」筏田かつら(宝島社文庫)

地味な眼鏡男子とあまのじゃくな美少女の「じれったい恋」を描いた、大人気青春恋愛シリーズ初の日常短編集。
靖貴と恵麻の前日譚「Walk Through the Rain」、久美子を通して描かれる恵麻の小中学校時代「Yes, Emma OK?」、二人の卒業後がわかる「彼女が部屋で待ってるから」などを収録。男子グループでの遊園地の顛末や晋の意外な一面も綴られる。
キュンと胸が疼き、時には切なさを覚える、必読の一冊。


シリーズ四作目。掌編から短編くらいの長さの短い話が、高校在学当時やそれ以前が語られる7編と本編後大学生になってからが4編、計11話入った短編集。
この本を一言で表すと「恵麻ちゃんかわいいの本」。
過去の話でもその後の話でも、サブキャラ視点で靖貴や恵麻には直接関係ない話でちらっと出て来るエピソードでも、目立つのは恵麻の残念さ。靖貴目線の本編だと、所謂クラスのトップカーストのイケてる女子風で女王様気質な女子のイメージが強かったのに、それを覆すエピソードが次から次へと出て来る。
ちょっと孤高でかなり不器用なのは本編でもうかがい知れたけど、ここまでぼっち属性でがっかり美人だったのは予想外。これはお姉さんが猫可愛がりするのも、親友の久美子が過保護気味なのも肯ける。危なっかしいもの。
短編として好きなのは、
前半では恵麻が恋する乙女全開な『Zipper』と恵麻と久美子が仲良くなった経緯が語られる『YES,Emma OK?』が良かった。久美子の我が道を行く感じは中学でもう発揮されているのね。
後半の4編はニヤニヤ全振りでどれも良いが、性格も趣味も全然違うのに二人の相性の良さが分かる『LEICA』と、靖貴の気の利いた優しさがにくい『Nothing Matters』が好き。いやホント、恵麻は靖貴に捕まって良かったなあと、しみじみ思う。
かなり間の開いた予想外の続編だったけど、沢山ニヤニヤさせてもらって大満足の一冊だった。