いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「安達としまむら10」入間人間(電撃文庫)

私は明日、この家を出ていく。しまむらと一緒に暮らすために。私もしまむらも、大人になっていた。
「あーだち」跳ね起きる。「おぉでっ」派手に後退した私を見て、しまむらが目を丸くした。両手をおどけるように上げる。下りて目にかかる髪を払いながら、左右を見回して、ああそうだと理解していく。マンションに移り住んだのだった。二人きりなのか、これからずっと。
「よ、よろしくお願いします」
「こっちもいっぱいお願いしちゃうので、覚悟しといてね」
私の世界はしまむらですべてが出来上がっていて、これからの未来になにも不安などないのだ。

絵師がマシになった


二回目のバレンタインデー前後の“今”の話と、社会人になってしまむらと安達がルームシェアを始める“未来”の話。交互に二元中継でお送りしますな二桁10巻。
悪女しまむらがまた女の子を泣かしていた。ひでーやつだ。
……いや、どちらかというとしまむらは気の毒な方なのだけど。
安達といい樽見といい、どうして重い同性ばかりが寄ってくるのか。重い女ホイホイですな。で、寄ってきた中で一番重いのはヤチーですな。小さくても宇宙服来てますからね。
という半分冗談はさておき、
安達の想いに自分なりに応えるつもりはあるのに、自分の言葉にどうしても本気や真剣さが乗らないことに悩むしまむら。テンパりながらも自分を引っ張ってくれる安達の存在と、そこから生まれる自分の変化を感じるしまむら。悩む“今”と少し吹っ切れた“未来”の対比でそれらが表現される、一冊丸ごとしまむらメインの巻だった。人付き合いの煩わしさと、でも拒絶するほどの嫌とは思わない、その微妙な塩梅には強く共感する。
それにしても安達は大人になっても変わってないな。高校の残り1年と大学4年間、この調子でよく持ったなあ(苦笑) それでも家を出ることで母のことを考えるようになったのは、いい変化かも。100%しまむら依存なのは変わってないけど。
アニメが終わってもまだ続けるつもりはあるようで? 勤勉なのか気分屋なのかよくわからない作者の言うことなので、話半分に聞いておこう。