いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「僕の愛したジークフリーデ 第2部 失われし王女の物語」松山剛(電撃文庫)

「光なき」剣士・ジークフリーデは、国に、その王女に忠を尽くした「騎士」であった。暴君と化し、民を無意味に処刑するかつての主・女王ロザリンデの凶行を止めるため、対峙したジークフリーデ。
しかし、その結末は無慈悲だった。
助命の嘆願は、彼女の両腕と引き換えに叶えられた。
責任を感じる旅の魔術師・オットーはジークフリーデの治療と、リハビリに努める。その中で、二人は互いの過去を知り絆を深めていく。
だが、冷酷に時が過ぎ、再びロザリンデによる犠牲が生まれようとするとき、二人は――。
乱世に生きる少女たちの物語、第2幕。


完結編……だと!?
騎士がが両腕を失う壮絶なラストからの続き。
責任を感じ自分の身体を省みず付きっ切りで看病するオットーと、魔術の事故で起きた一部の記憶の共有。ようやくオットーとジークの強い繋がりが出来て、タイトルに近づいてきた実感と、一番後ろから走ってきたオットーがヒーロー(♀)争奪レースで勝負できるところまで来たかなと思える、第二章までは普通のスピードだったのだが……。
そこから先は光の如く駆け抜けていった。あまりに駆け足で打ち切り臭しかしない。広げた風呂敷だけはきちんと畳んでいったのが逆に物悲しい。
女王ロザリンデの複雑な境遇とジークフリーデとの繋がりは、ゆっくりやれば間違いなく優しく切なく泣ける話だったはずなのに、ただ事実を並べられただけではジークフリーデの涙に感化されない。そこに関わってくるオットーの師匠とロザリンデの母との関係(こっちも百合だった!)も、掘り下げられればオットーを絡めての愛憎劇になっただろうに、結局エピローグで国を出ていく決断をあっさり下せるくらいにしかジークと仲良くならなかった。もう一人のヒロインのイザベラに至っては、今回ただのお助けキャラで終わってしまった。
因縁と愛情と憎悪が幾重にも絡むキャラクターの構図と、登場人物ほとんど女性の百合の雰囲気がとても良かっただけに、打ち切りは残念でならない。売れなきゃ出せないのは分かるけど、もったいないという感想しか出てこない。