いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「魔女の娘」冬月いろり(メディアワークス文庫)

著名な魔女を母に持ちながら、魔法が使えない「失くし者」の少女・帆香。旅に出たまま姿を消した母の手紙に導かれ辿り着いた「魔法のレンタル屋」で、月額9万8000円と引き換えに魔力を借りられることに。母の面影を追い、憧れの魔法学園に入学した帆香だが、ひょんなことから早々に「失くし者」であることがばれてしまう。魔力を持たない「失くし者」にも関わらず、なぜか魔法を使える彼女に、クラスメイトが向ける視線は冷ややかなものだった。
そんな中、生徒が次々と魔力を奪われる謎の事件が勃発。犯人の疑いをかけられた帆香は、クラスでただ一人帆香の秘密と無実を知るレンタル屋の息子・千夜と共に、自ら犯人探しに乗り出すことに――。魔法社会のはぐれものが出会い、紡ぐ。鋭くあたたかい学園ファンタジー・開幕!


魔女の娘なのに魔力がなかった少女が、母への憧れを胸に魔法をレンタルして魔法学園に入学する現代ファンタジー

あらすじから優しいだけの物語ではないことは察していたが、予想以上にシビアでシリアスな話が出てきた。
主人公が魔法大好きっ子で、魔法を使う時は常にワクワクしているのもあって、魔法を使う瞬間だけはメルヘンでほのぼのしたファンタジーの装い。しかし、それを学ぶ学園は、
クラスメイト達の嘲笑にマウンティング、そこから発展するイジメ。偏見教師による嫌がらせに、“大人の対応”ばかりの大人たち。学校社会の悪い面がこれでもかと詰め込まれていて、なまじファンタジー部分が可愛い分、人の醜さがより浮き彫りになっている。
そんな逆境を多くの涙と数少ない理解者に支えられながら健気に頑張る主人公をハラハラしながら手に汗握って応援する、そんな物語だった。
これで終わりが納得できるハッピーエンドだったら、いい話だった、面白かったと言えたのだけど……。
まず、事件の顛末がモヤっと。まるで考え方が違う人を、最後まで言葉で説得しようとているので徒労感が強い。そして解決は結局力技。
エピローグもモヤっと。主人公の祖母にしても教師にしても、子供の為と言いながら自分の主義主張を無理やり押し付けていて、子供の意志や選択肢がどこにもない。学園長は愛だ優しさだと良いことのように言っているが、大人のエゴとしか思えない。
世界観は良かったし、主人公は応援したくなるいい子だったのだけど、結末には全然納得がいかない。