いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「海鳥東月の『でたらめ』な事情」両生類かえる(MF文庫J)

「財布? 携帯? ぜんぜん違うよ。私が盗まれたのは――鉛筆さ」仲良しのクラスの女子・奈良芳乃(ルビ:ならよしの)から突如、謎の相談を受けた海鳥東月(ルビ:うみどりとうげつ)。だがそれは奇妙奇天烈な事象の始まりに過ぎなかった。海鳥の自宅に現れた謎のネコミミパーカー『でたらめちゃん』。彼女によって引き起こされるトイレの貸し借り、裏切り、脅迫、掴み合いからの一転攻勢、そして全力の命乞い……全てを終えた後、でたらめちゃんは海鳥に告げてくる。「海鳥さん。私と一緒に、嘘を殺してくれませんか?」海鳥は訳も分からぬまま『嘘殺し』に協力することになり!?
第17回MF文庫Jライトノベル新人賞〈最優秀賞〉作は奇妙奇天烈! だけど青春ストーリー?


相手の〈嘘〉を見破り自分とでたらめちゃん(表紙のネコミミパーカー娘)を守れるか!?てな感じでストーリーが、進むような進まないような。人のついた〈嘘〉が実態を持ち世界を引っ繰り返す現代ファンタジー?みたいなもの。なんとも形容しがたい。

屁理屈をこねくり回すタイプの作品は大好物なのだけど、これはちっとも合わなかった。
〈嘘〉にまつわる奇怪な現象や事件=問題定義のところは面白そうだと感じるのだけど、そこからとんでも理論をまくし立てたり途中で論点をずらして煙に巻いているだけで、説明に説得力がまるでない。なんだか言った言わないの水掛け論を延々と読まされている気分になった。この手のタイプの作品は、あり得ないこと・おバカなことを「なるほど」と納得させられてしまう謎の説得力、バカなことをやっているのに話しぶりは理路整然というギャップが面白いものだと思うのだが。
あと、帯でやたらと「可愛い」アピールしているのだが、拗らせた変人奇人しか出てこないこの作品の、どこに可愛い要素があるというのか。ネコミミフードが可愛いのは絵師の力だ。
うーん、これが最優秀賞か。奇作怪作の部類でインパクトはあるので特別賞とかならまだ話は分かるのだが。なろうか何処かで見たような作品ばかりが送られてきて、変わり種の本作が良く見えてしまったんだろうか。
MF文庫Jさん、ライトノベルはエンタメ作品ですので、新人賞の最優秀賞には王道を選んだ方がいいと思いますよ。