いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「虚構推理 逆襲と敗北の日」城平京(講談社タイガ)

「それは巨大で、凶暴で、獰猛で、何より場違いな幽霊だった」
警察に呼び出された琴子と九郎。二人と因縁深い桜川六花が、奇妙な連続転落死事件に居合わせ、容疑者になっているという。
六花が二人を前に語ったのは、異郷の野獣キリンの霊による殺戮劇だった。琴子たちは彼女の無実を証明すべく調査を始め、事件の背後にある悍ましい「呪い」の存在を知ることとなるーー。


鋼人七瀬事件の黒幕にして恋人の従姉・六花との再戦。
サブタイトルに『岩永琴子の逆襲と敗北』という衝撃の章タイトル。これは琴子大ピンチの予感と思って読んでいたのだが……うーん? いつの間にか発売予定が出た時とサブタイトルが変わっていたが、読んだ限り前のサブタイトル「知恵なす者の悪夢」の方が合っているような(^^;
久しぶりに近くにいてるだけで不気味さがあるのに、必要以上のことは話さない六花の様子に、どんな好手を打っても罠にかかっていそうな気持悪さがあって、スリリングな状況が続く展開。それに事件の方も、キリンの霊に関する殺人事件の真実の推理と警察を欺く虚構推理、二つが同時進行する頭脳戦はいつもと変わらず面白い。それと上記の『敗北』に対する期待と不安。道中の緊張感とワクワク感は最高潮だった。
ただ、その道中の高揚感に比べるとオチが弱いというかしっくりこないというか。
これで琴子の敗北と言われてもなあ、というのが率直な感想。琴子が人ならざる者ということを改めて確認しただけで、六花の方も勝ちとは言えない結果とあって泥仕合という印象が強い。辛うじて勝利条件を明確に提示してない九郎だけがノーゲームで、少なくとも勝者はいないように思う。
起こった事件に関するエピソードは面白かった。シリーズの根源に関わる話は消化不良。
どう転んでもハッピーエンドはないという後味の苦さだけを残していった。まあ、そもそもきっちりとした結末が出て終わるシリーズではない気がするけど。

辛ラーメン、カツ丼、イカ焼き……病弱なイメージが強い六花さんが食いしん坊キャラになってて笑ったw