いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「義妹生活4」三河ごーすと(MF文庫J)

悠太が初めて沙季に「兄さん」と呼ばれて以来、兄妹として進展したかに見えた二人だったが、互いに秘めた想いのせいもあってか、その関係はどこかぎこちなかった。そんな中で、三者面談、オープンキャンパス、男女混合の勉強会など、様々なイベントが訪れ、二人はそれぞれ新たな出会いを果たす。
『距離の近い異性が偶然ひとりしかいなかったから、好きになっただけ』
そんな意地の悪い命題に直面した二人は、再び自分自身の感情と向き合うことに。未来と現在、常識と非常識、建前と本音、自分の幸せと家族の幸せ。何を優先し、何を我慢するのが正解なのか? 悩みと出会いの果てに、悠太と沙季はある“決断”をくだす――。


夏休みが終わって再び学校のある日常へ。悠太視点がメインのこれまでと違って、同じ日を悠太と紗季の二人の視点で綴る9月の一幕。自分の中の好きという気持ちに気付いた二人の変化は?な4巻。
すれ違うんじゃなくて、二人揃って後退りするとは。二人の性格とこれまでの境遇を考えるとそうなっちゃうか。
親友に秘密を明かしてまで自分の気持ちに蓋をしようとする悠太、「兄さん」という壁を作って必要以上に距離を置こうとする沙季。どちらも無理してお互いから目を背けようとする姿が悲しくて。自分の気持ちに気がついて今回から両片想いの楽しみ本番だと思っていたのに、もどかしさや焦れ焦れよりも、切なさが勝ってしまって痛々しさすら感じる。
周りに目を向けたり、新しいことを初めてみたりするのは本来いいことのはずなのに、動機が後ろ向きなので自分の心をわざと傷つけるような行動に見えてしまう。
でも、その行動のおかげで悠太は予備校の同級生藤波さん、沙季は読売先輩の大学の工藤准教授と、それぞれに客観的に理解してくれる人物に出会い、自分を見つめ直す言葉を貰えたのはよかった。大きなターニングポイントになりそうだ。
それにしても、この歳で人の気持ちのままならなさを悟っている藤波さんって、、、これまでの人生を思うと胸が痛む。また、3巻から引き続き工藤先生の会話(というか詭弁)は面白い、読む分には。目の前に居たら確実にストレス溜まるけどw
そんな二人の言葉を噛みしめ、少し自分の気持ちに素直になることを決めた二人が、どんな距離の縮め方をするのか次回が楽しみ。でもやっぱり感情に理由と名前を付けてすれ違うんだろうな。