いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「天才王子の赤字国家再生術11 ~そうだ、売国しよう~」鳥羽徹(GA文庫)

「この帝位争奪戦を終わらせます」
兄皇子達の失点を好機と捉え、一気に勝負を仕掛ける帝国皇女ロウェルミナ。しかし兄皇子の陣営には帝国士官学校時代の友人、グレンとストラングの姿があり、彼らもまた起死回生に打って出ようと試みる。
かくして政略と戦略が入り乱れ、各陣営が削り合う中、それに呼応してレベティア教と東レベティア教も動き出し、更にはウェインも舞台に介入すべく帝国へと踏み入ることで、いよいよ大陸東部の混迷は頂点を迎える。
ただ一つの至高の座に就くのは、果たして誰になるのか。
吹き荒れる戦乱の嵐。大陸の歴史を左右する転換点となる第十一弾!

アニメなんてなかった。いいね。


泥沼化していた帝国の後継者争いがついに決着する11巻。
というわけで、舞台は久しぶりに東側。女狸ロワの晴れ舞台、そして陣営がバラバラになってしまった士官学校の悪友たちの想いが交錯する物語。
ロワ、グレン、ストラングがお互いの実力を認めた上で騙し合い競い合う、友情に信頼とこのシリーズには珍しく爽やかさを感じる話だった。その中で、散々策を弄した上で最後は「女は度胸」で勝利をもぎ取るロワは、やっぱりウェインと似た者同士だなと。
悪友グループのもう二人、ウェインとニニムは元々他国の問題なのと、第三皇子とストラングの策略もあって外野……のはずだったんだけど、それでも嫌がらせに行くのがウェインクオリティ。むしろ余計なちょっかいを掛けたから、このおちょくるような嫌がらせになった感がある。第三皇子の正解は彼には一切関わらないことだったと思うね。
その嫌がらせにダシに使われた第一皇子が、可愛い妻子との穏やかな隠居生活という、期せずしてウェインの夢を叶えているという皮肉(+151頁挿絵のウェインの顔)でくっそ笑った。
友情と信頼、いつもならクソくらえと言ってそうな見えないものが前面に出たある意味らしくない話だったが、今回も面白かった。
ただウェインの影はちょっと薄め、ニニムはもっと薄めで物足りない面も。主人公が思いもよらない事故で慌てる姿と、それを逆手に取っての逆転劇。それを陰で支えるヒロイン。これがないとね。
東は一応安定したが西には不穏な空気がいっぱいで、物語はそろそろ佳境に入りそう。相変わらずな引っ掻き回し婆さんの策略でニニムが表舞台に立たされる?