いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ブービージョッキー!!」有丈ほえる(GA文庫)

19歳の若さで日本最高峰の重賞競走・日本ダービーを制した風早颯太。
しかしそんな栄光も今は昔。勝てなくなり、ブービージョッキーと揶揄される颯太の前に現れたのは――
「この子に乗ってくれませんか?」
可憐なサラブレッドを連れた、超セレブなお姉さんだった!?
「わたしが下半身を管理します! 」
「トレーニングの話ですよね!?」
美女馬主・美作聖来&外見はお姫様なのに中身は怪獣の超優良血馬・セイライッシキ。ふたりのセイラに翻弄されながらも、若き騎手は見失っていた情熱を取り戻していく。
「あなたのために勝ってみせます」
萌えて燃える、熱狂必至の競馬青春コメディ。各馬一斉にスタート!

第13回GA文庫大賞<銀賞>受賞作


競馬を題材にした青春ラブコメ
読む前は「ウマ娘人気にあやかった色物ラブコメかな?」なんて思っててすみませんでしたー!
スランプに悩む主人公が復活をかける青春の物語としても、幼い頃に出会った二人が約束を果たすために再開するラブストーリーとしても王道のストーリー。そこに競馬という競技の厳しさ、馬という生き物と扱う難しさと喜びを上手く絡めて、見事に一つの物語として完成されていた。また、間に挟まるコメディパートも、ハイテンションなのは好みの分かれるところだが、女性キャラクターの可愛さがよく出ていて十分に楽しめる。
それと、競走馬に対する真摯な姿勢や、競馬の専門知識への丁寧な説明から深い競馬愛を感じられる。資料の読み込みや取材も相当頑張ったのだろう。騎手、厩務員、馬主のそれぞれの立場から、競走馬への想いが語られているのがとても良かった。
ただ、一点難点を上げると
なまじ競馬関連が名称も制度も現実に即しているばかりに、現実ではありえないところの違和感が強い。魅せる為に捻じ曲げた部分もあるだろうけど、それ以上にラノベ的に分かりやすく落とし込む時に加減をミスった感じかな。そういう意味では、競馬を知らない方が楽しめる作品かもしれない。
それでも、ラブストーリーとしてもスポーツを題材にした青春ものとしても王道を書ききった力作にして良作。熱くなれるいい物語だった。


とりあえず担当はシャドーロールの資料をイラストレーターに送りなさい。