いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「Unnamed Memory -after the end- I」古宮九時(電撃の新文芸)

「魔女が貴方に、永遠に変わらぬ愛情を捧げましょう」
オスカーとティナーシャが呪具エルテリアを破壊したことにより、歴史の書き換えは終わった。そして、もう二度と書き換えられない歴史で王と魔女は結ばれ、二人の恋物語は幕を閉じる――はずだった。
世界の理から逸脱したオスカーとティナーシャに託されたのは、残された九つの呪具をすべて破壊するという使命。死と再生を繰り返しながらの、王と魔女の果てしない旅がいま始まる。


王と魔女の物語、新たなる旅路開幕。
二人の人生を大きく歪ませた呪具エルテリア。それと同じ外の世界から持ち込まれた呪具の破壊を託された二人の、壮大な旅路が今始まる。

使命を果たすまで死んでも再生する。呪いとしか思えない状況も、この二人が一緒なら大丈夫。なんて思っていたのだけど……。
内容としては使命の旅は始まったばかりということで、二人の使命と再生する条件の確認するような話だった。
前半は使命の方、地道な呪具探しとその破壊の様子。見つけるのは困難、見つけても壊すのがもっと困難。これは長い旅路になりそうだと、二人の苦労が偲ばれつつ、読者的には二人の様子が長く読めそうで嬉しい複雑な心境。
ただ、ここは二人が揃っているので安心感があって、何より信頼と愛情がたっぷりの二人の掛け合いがたくさん読めるので、圧倒的に「楽しい」が勝つ。
問題は後半、再生する条件=一時的な死別の方。
ティナーシャの反応が予想以上に劇的だった。悲嘆に暮れる姿が痛々しくて見ていられない。
魔女として老成しているから、心で泣いても表面的には毅然と振る舞うものだと思っていたのに。四百うん十歳でも人として女性として愛された相手も期間も少ないからかな。それだけ愛が深かったと知れたのは良かったのだけど。
それでもオスカーがすぐに復活すれば、笑い話やからかい材料になったんだろうけど、そうはならないのでその後の様子も痛々しいという。ちょっと違う意味で。
オスカーの魂の復活を知り、魂覚醒前の少年・ラジュに対する猛烈アタックは「ティナーシャ様、4巻以来二回目の暴走求婚美少女に」といったところ。身元ははっきりしていた前と違って、正体不明になってるのがなお性質悪い。ラジュの「自動追尾の毒キノコ」発言は笑えるやら悲しいやらw 
それにしても、復活までこんなに時間がかかるとは。この世界(≒作者)の意地の悪さが垣間見えて苦笑い。今後これを何度も経験することになるのか。二人の心への負担を考えると胸が痛い。それでも今後も酷いことされるんだろうなあ。
二人が本当の意味で再開したところで次回へ。
示された使命の困難さと危ういティナーシャの姿に不安になる面はあるけれど、また二人が揃ったので楽しい掛け合いは戻ってくるだろう。次巻が待ち遠しい。


それにつけてもルクレツィアお姉ちゃんの面倒見の良さよ。