いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「深夜0時の司書見習い」近江泉美(メディアワークス文庫)

高校生の美原アンが夏休みにホームステイすることになったのは、札幌の郊外に佇む私設図書館、通称「図書屋敷」。不愛想な館主・セージに告げられたルールを破り、アンは真夜中の図書館に迷い込んでしまう。そこは荒廃した裏の世界――“物語の幻影”が彷徨する「図書迷宮」だった!
迷宮の司書を務めることになったアンは「図書館の本を多くの人間に読ませ、迷宮を復興する」よう命じられて……!?
美しい自然に囲まれた古屋敷で、自信のない少女の“物語”が色づき始める。


父の勝手で札幌の私立図書館に二週間ホームステイすることになった女子高生のアン。その図書館には秘密があって――本と少女の現代ファンタジー

「図書迷宮」……真夜中になると不思議な迷宮になる図書屋敷に迷い込んだ主人公アンが見たものは、喋り出す猫に、本のキャラクターや著者が歩き回る姿、蝶になって飛び回るカギ、文字を食べる大きな虫。少しメルヘンチックでちょっとの恐怖も織り交ぜたファンタジーで、どこか古き良きジブリ作品を思わせるワクワクが止まらない世界観が繰り広げられていた。映像作品にしたら映えそうなシーンがいっぱい。
それでいて各話が『おおきなかぶ』や『シャーロック・ホームズの冒険』など過去の名作を軸に置いて話が進む、本好きでファンタジー好きのツボを的確に押さえた作りになっているのもにくい。
と、世界観は控えめに言っても最高だったのだけど、詰め込み過ぎな面も。
代替わりした地主の対応に存続問題(金銭的な話)、本の老朽化などの図書館が抱える問題と、ネットの悪意に主人公の過去、浮世離れしていて親失格な父親の主人公が抱える問題。それら数多くの問題が全て盛り込まれていて、明らかに一冊に収めるにはキャパシティーオーバー。その所為でどの話も忙しなくて集中できないのが大きな難点。四話あるのだからこの世界観を堪能できるゆったりした話も一つあっても良かったと思うんだ。
世界観は最高だった。しかし3巻くらいでゆっくり丁寧にやって欲しい内容だった。