いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「高嶺の花には逆らえない」冬条一(ガガガ文庫)

佐原葉は、学校一の美少女・立花あいりに一目惚れをした。イケメンな友人・進藤新に相談をすると、告白のセッティングをしてくれることに。伝えられた場所に行くと、そこにはあいりに告白をする新の姿が。友人に裏切られ、好きな人を目の前で奪われた葉は、ショックでその場を逃げ出してしまう。翌日、教室に入ると新はなぜかスキンヘッドになっていた。さらに、恋人がいるはずのあいりから積極的にアプローチをされるように!? 好きな女の子が、なんだかヤバい! 謎多き高嶺の花と織り成す、ゾクゾク必至の新感覚ラブコメ!


両片想いで勘違い/すれ違いなヒロインと、垢抜けない子を美少女に育てあげるプリンセスメーカー的なヒロインのダブルヒロインで送る、変化球な三角関係ラブコメ
鈍感無自覚主人公の特性の最大限に活かして、本来合わさることのない要素を繋ぎ合わせた挑戦的な作品。超絶美少女とおデブちゃん、普通なら勝負にならなそうな二人が、主人公の鈍感具合とそれぞれの持つ残念さで、いいバランスで(むしろおデブちゃん有利で)鎬を削り合っている状態が、甘酸っぱいのに笑えるという不思議ワールドを味わえる。
と、それだけなら楽しいラブコメだったと躊躇いなく言えたのだけど、首を傾げざるを得ない要素が一つある。それが級友のイケメンどクズの存在。流行りの「ざまぁ」要素を入れたかったんだろうけど、ラブコメに「ざまぁ」は必要か? この作品にここまでのクズが必要か?
このクズに関わっていた所為で、パッケージヒロインの立花さん(美少女の方)の出番と魅力が大きく削がれてしまっている。おデブちゃんヒロイン武田さんの魅力は十全に伝わって来ていただけに、立花さんも同じ条件で戦わせてあげて欲しかった。三角関係ラブコメの楽しさをわざわざ半減させている気がしてしょうがない。
それでも、相手がぎゃふんと言うまでやり切ってくれればまだスカッと出来たのだろうけど、主人公が中途半端にいい子ちゃんしてなあなあになってしまった為に、クズ野郎が息を吹き返してしまって、読後感の悪さと言ったらない。
コンセプトは面白かったし、ある程度成功していたと思う。それだけに『ざまぁ』要らねという想いを強くした作品だった。