いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「魔法科高校の劣等生 Appendix (1)」佐島勤(電撃文庫)

2095年9月。第一高校にある荷物が誤配される。その中身は未確認文明の魔法技術製品『聖遺物(レリック)』。人知れず自動的に起動していて――。
司波達也は、気がつくと森の中にいた。夢の中のような世界に困惑している達也の前に、深雪が現れる。
妹と無事に再会できたことに安堵する達也だが、深雪は純白のドレスを身にまとい、国王の娘になりきっていて!?
これは、いつもの『魔法科』ではない『魔法科高校』の物語。『魔法科』10周年を記念して、TVアニメ第1期パッケージに収録された『ドリームゲーム』を電撃文庫化!


アニメBD/DVDの付録小説の文庫化。
一高に誤って送られてきた聖遺物によって、達也たちがゲームの世界に入り込んだような夢を強制的に見せられる連作短編。王族、暗殺者、勇者、魔王等々、その日の夢によって様々な役に当てはめられ、その役を演じたりあえて逆らったりしながら、そんな状況に陥った原因を探っていく。
端的に言うとなろう系異世界に達也が行ったらどうなる? というお遊び要素満載のおまけ小説だからできる二次創作的な話。
異世界でもお兄様が無双するのかと思ったら、異世界の設定の粗に対して達也が冷静かつ的確に、身も蓋もないツッコミを入れていく方がメイン。お兄様の生真面目さをそっちに使うのか! これが滅茶苦茶面白い。作者自ら粗を作って主人公にツッコませるマッチポンプな面を感じなくもないが、面白ければ何でもいいでしょう。元は付録だし。
それにしても魔王は似合い過ぎだろうw 本人は不服そうだったけど。
また、このヘンテコな状況を意外にも最大限楽しんでいたのが深雪。色々なシチュエーションになることをいいことに、あの手この手で達也にイチャついていた。気苦労が多かった達也、羞恥プレイが多かったエリカやレオ他いつものメンバーから考えると、今回は深雪さんの一人勝ちだろう。
ただ後半、正気になるメンバーが増えてくると、練習不足で出来の悪い舞台劇を見せられているような居たたまれなさを感じるようになり、夢の内容もグダグダに。一発ネタで400ページ超引っ張るのは無理があったな。
それでも、基本シリアスなこのシリーズでは珍しく、遊び要素がいっぱいで面白かった。①ってことは次巻もあるのか。何してくれるのか楽しみ。