いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「同い年の妹と、二人一人旅」三月みどり(MF文庫J)

「旅は一人に限る」が信条の高校生、月島海人。好きな時間に好きな場所へ──効率よく計画通りに進められる魅力に惹かれ、バイト代を貯めては全国を一人旅していた。しかし父の再婚で義妹ができたことで、計画通りに行かない毎日が始まる。北海道から来た連れ子の美少女・冬凪栞は同い年の若女将。仕事をするうちに「旅」に憧れた彼女は、海人の旅行についていきたいと言うのだ。当然それを拒否する海人だが、栞の心中を知り仕方なく了承。代わりに、二人でそれぞれ一人旅をする「二人一人旅」ということにして、日帰り旅行から始めるが──。旅を通して、お互いを知っていく。心温まる二人の物語、出発です。


義理の兄妹になった二人が旅行を通じて中を深めていく物語で大筋では心温まるいい話だとは思うのだけど、あまり印象に残らない話だった。
旅先の旅館で出会った二人が意外な再開を果たし……という所謂ボーイミーツガールな展開なのだが、初めからやけに好感度が高い所為もあって、惹かれていく段階がないので心理描写が薄く感じる。
また、家族愛の話としても同様で、思春期の二人が突然兄妹になったことへの反発や、片親で育った苦労を分かち合ったりすることなく、不思議と初めから仲の良い兄妹で、多少の意見の食い違いはあっても大きな喧嘩はなし。仲良がいいのはもちろん良いことなんだけど、話としては平坦。
それと旅行記としても、有名どころを駆け足で回っているだけみたい。
穴場が出てきたりのマニアックさはなければ、有名観光地であっても思い入れを感じられれば行ってみたいと思うのだけど、それも特にない。なのでガイドブックを見てサラッと書いたような印象を受けてしまう。
ボーイミーツガールの要素、家族愛の要素、旅行記としての要素。何処が悪いってわけではないけど、どれも満遍なく網羅してしまったせいで全体的に薄味になってしまった印象。片親同士の再婚という想い状況の割にはお金、環境、好感度と、初めから全てが揃い過ぎていた。何か障害があってこそドラマが生まれると思うんだ。