いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「金沢古妖具屋くらがり堂 巡る季節」峰守ひろかず(ポプラ文庫ピュアフル)

古都・金沢の暗がり坂にある古道具屋・蔵借堂は、妖怪たちの古道具――古“妖”具を取り扱う不思議なお店。高校生の葛城汀一は人間ながらそこでアルバイトしており、唐傘お化けの時雨とともに日々妖怪がらみの事件に巻き込まれていた。
南国から来た双子の妖怪・ニライとカナイに出会ったり、呪具にまつわる相談を受けたり……。そして遂に、蔵借堂のルーツが明らかに!? しかし同時におおきな危機が迫ることに――。
ほっこり温かく、ちょっぴり切ない妖怪の日常系事件簿、感動のクライマックス!


古都金沢にある古道具屋を舞台に、人の世界に生きる妖怪たちの様子と人間と妖怪の友情を描く物語、(一応)完結編。
汀一が金沢に来てから1年が過ぎ、大学受験も見えてきた夏休み。いつも通り色々な妖怪絡みの事件に巻き込まれ、そこでの体験と出会いに影響されながら、汀一、時雨それぞれに将来を悩むお話。
近い年代の人間と妖怪のペアを見たり自分の地盤を見たりしながら、大いに悩み自分を見つめ直して将来を決めようとする若者二人の姿。蔵借堂の秘密を探るために汀一がこれまで関わってきた人たちを方々に訪ね、最後の騒動には武闘派妖怪勢ぞろいで事態に当たりと、過去の思い出(主に騒動)を振り返りつつ、二人が培ってきた人との繋がりを再確認するラスト二話。
この巻全体の在り方としても終わらせ方にしても、過去を振り返りつつ先の可能性を見せる、これ以上なく綺麗な最終回だった。
終わってしまうのは寂しいけれど、ここまで綺麗で爽やかなラストを見せられてしまうと、納得せざるを得ないというか、否応なく満足してしまうというか。
性格は明るいけれど引っ越しばかりで友達の少ない少年と、訳アリ(妖怪)の上に寡黙で友達が少ない少年が、唯一無二の親友を作り友情を育んでいく物語。男臭さもBL臭もまるでなく、純粋に爽やかに男の友情を感じられる稀有な作品だった。最後まで面白かった。
と、完璧な最終回感を出しながら、続刊の可能性はなくはないようで。期待せずに気長に待とう。汀一と亜香里の初々しいような熟年のようなスイーツデートとか、読みたいですねえ。