いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「三角の距離は限りないゼロ8」岬鷺宮(電撃文庫)

二重人格の終わり。それは「秋玻」と「春珂」、どちらかの人格の消滅を意味していた……。
「矢野君が、選んで?」
「選んでくれた方が、残ります」
わかっていたことだった。それでも、あまりに残酷なその結末に、僕は答えが出せないままでいた。
いよいよ境界を失いつつある二人と僕は、彼女のルーツを探る旅へと出る。
その果てに明らかになる、二重人格の真実とは――。
そして、僕らが見つけた『答え』とは――。
僕と彼女と彼女が紡ぐ、切なく愛しい、三角関係恋物語、堂々の完結。


無理して陽キャラ演じることを止めた少年・矢野と二重人格の少女・秋玻と春珂の恋物語、ついに三人の関係に答えが出る完結編。

納得三割、納得できない七割と言ったところ。
自分のキャラ作りに疑問を持ち本当の自分に悩む少年と、過度のストレスから自己が分裂して二重人格になってしまった少女。そんな二人(三人)のアイデンティティに悩む少年少女の恋物語として問いに対して、「矛盾していてもいいんだ」という答えには、大いに納得も共感も出来る。
しかし、この三人の三角関係の物語として、
自分という存在そのものを相手に選ばせる残酷な問いをした秋玻/春珂にも、どちらの自我も崩壊して廃人になっていたかもしれない危険な答えを突きつけた矢野にも納得も共感もすることは出来なかった。ここまで相手を信じすぎる行為には依存以上の狂気を感じてしまう。
ちなみに「納得できない」には、再会する前に終わるなよ!が一割含まれていることも付け加えておく。
難しい問題をテーマにした物語として考えさせられることが多くあった。その点ではいい物語だったと思う。但し、途中から甘さも切なさも感じなくなってしまって、ラノベブコメとして青春小説として欲しい、若さ、爽やかさ、健全さからかけ離れた物語になってしまったのが残念だ。