いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 VIII」支倉凍砂(電撃文庫)

いがみ合う王子たちを馬上槍試合をもって仲裁したコル。ウィンフィール王国内での争いが終息したのも束の間、コルたちの前に使者が現れる。使者の目的は八十年ぶりに開催される公会議に、“薄明の枢機卿”の出席を請うものだった。
公会議開催の真偽確認をカナンに任せ、コルとミューリは聖典印刷の計画を進めるべく、資材の確保と新大陸の情報を求めて大学都市へ向かう。
そこはかつてコルが放浪学生として過ごした街。だが、その街を二分する大騒ぎが勃発し、その中心には"賢者の狼"と名乗る人物までいて――!?


王子二人の仲直りを成功させた二人の次の行き先は、コルのトラウマの地 大学都市アケント。聖典印刷で不足している紙と来る教会との直接対決の味方を求めて来た知と混沌の街で出会ったのは、まさかの同族・狼の少女で――な第8巻。

シリーズ7巻で培われてきた二つの通例をぶち壊していった驚きに満ちた巻だった。
一つは、問題を解決することが必ずしも良いこととは限らないということ。
これまでも味方に付いた側にとっての解決であって、敵側にとっては都合の悪い状況ではあったが、味方した側が問題を解決されると不都合というパターンは初めてで意表を突かれた。今回出てきた解法が、権力を持つカナンによる力技だったのは一つの伏線だったのかも。
もう一つがミューリの立ち位置。
普段、日常パートでは我儘な少女らしい姿を見せていても、問題が佳境に入ってくると、まだまだ危なっかしく時々ヘタレるコルを的確にサポートする賢狼の娘というのがミューリの姿だった。コルだけでなく読者も、どうしようもなくなったら最後はミューリが何とかしてくれると、長い時を生きてきた老獪な賢狼ホロの役目を期待してしまっていた。
そんな中で見せた今回の弱々しい姿は衝撃だった。まだまだ成人前の子供で、弱さも成長しなければならない面も沢山ある少女なのだと、当たり前のことを気付かされた。そういえばホロの娘でもあるけど、ロレンスの娘でもあるんだから駄目な面もいっぱいあるよな←
まあ、シリーズ全体の半分はヘタレた情けない姿を見せてきたコルさんサイドにも問題があるのだが、、、と思っていたら、コルが一日で女の子を二人も泣かせる悪い男に!? そっちの方面で成長しなくていいから(苦笑)
そんなわけで今回は、何度も予想を裏切ってくれる回だった。やっぱり予定調和よりもサプライズの方が面白い。