いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「リコリス・リコイル Ordinary days」アサウラ(電撃文庫)

「喫茶リコリコへ、ようこそ!」
あの破壊された旧電波塔をのぞむ東京の東側にあるオシャレでおいしいカフェ――それが、喫茶リコリコである。
本作はオリジナルテレビアニメーションリコリス・リコイル』では描かれる事がなかった錦木千束や井ノ上たきななど、看板娘たちが織り成すありふれた非日常のちょっとした物語。
おいしい甘味に、ガンアクションに、ゲームに、人情ドラマ、ゾンビと怪獣にロードムービー……そしてほのかに愛!? もちろんコーヒーに人助けだって!!
「どんなご注文も……おまかせあれ♪」
そんな日々を積み重ねていくことで彼女たち絆が生まれていく――オマケ付きお菓子のバラエティパックのような何でもありの詰め合わせを原案者自らがスピンオフ小説化!


アニメでは語られなかった喫茶リコリコの日常を描く、作者曰く“バラエティパック”な短編集。喫茶リコリコのメンバーが揃っているので、アニメでいうと3話から9話までの間。

恋バナ?あり、ガンアクションあり、飯テロあり、ゾンビあり、シリアスありのまさにバラエティパック。DAでの人間関係だとか真島の動向だとかよりも、こっちをアニメで視たかった。そう思わせてくれる楽しい短編集だった。
1クールアニメだからどうしてもストーリーの根幹の部分が優先して描写されて、日常パートが端折られてしまうのは仕方がないことなのだけど。特に第四話の夢オチ悪ふざけはアニメでやってこそだろう。ゾンビ+怪獣で作画スタッフは死ぬ思いになるだろなw
と、アニメと同じく楽しめたのは、ヒロインの描写に全く違和感がなかったからだろう。
千束の底抜けの明るさと行動力、一本筋の通った考え方は、第一話のクルミの台詞「千束が千束してる」の言葉通り。アニメを視ていれば完璧にあの声あのテンションで脳内再生されるはず。
たきなは文章になったことでより良くなった気がする。アニメの表情や態度で分かる親密度の変化もいいけど、文章になったことで千束に心を許していく過程とその時の心情がはっきりわかるのがとても尊い
普段は生真面目が過ぎることで笑いを生むコメディキャラ、銃を持たせると的確に千束をフォローする有能バディ、ふと千束に気を許す瞬間に百合の香りを漂わす。たきなさんてばパーフェクト百合ヒロインじゃありません?
また、濃厚な飯描写(花いなり食いてー!)に、フリーライターの徳田に早期リタイアの土田と小説版オリジナル常連がおっさん二人という臭さなど、作者らしい描写が各所に散りばめられているのがアサウラファンとしては嬉しいところ。
期待通りの短編集、面白かった。アニメが終わった頃にもう一冊出してくれてもいいのよ←無茶ぶり