いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「七つの魔剣が支配する X」宇野朴人(電撃文庫)

長きに亘った決闘リーグの終盤戦。ゴッドフレイとレオンシオの因縁が決着し、キンバリーは新たな学生統括を迎える。そうして喧騒が一段落した校舎の中、自分を求めるナナオと向き合い、姿を見せないユーリィの身を案じながら、オリバーはその裏で三人目の仇敵デメトリオの攻略へ向けて同志たちと策を練る。教師側の捜査による事態の切迫も決断を急かし、彼らはついに決戦へと身を投じる。
迷宮四層の原野にてオリバーたちを迎え撃つデメトリオ。白日の下に晒された神代の秘奥を前に、彼らが用意した必勝の策はあっけなく踏み潰されていく。絶望的な戦況はやがて、少年がその胸に秘めた凄惨な過去を暴き始め――。


上級生の決闘リーグ決着。学生統括選挙。そして“三人目”デメトリオ討伐と盛り沢山な第10巻。
まずは決闘リーグ終盤戦。
先輩たちの戦いは、キンバリーらしい搦め手はもちろんあるが、どの試合も意外にもルールに則った正々堂々とした勝負。熱い攻防ではあるものの、このシリーズにしては外連味がなさ過ぎて物足りなかった。
学生統括選挙前後は小休止の日常パート。
ミリガン先輩、ドンマイwな選挙戦は置いといて、ここはナナオが正しくヒロインしたことへの驚きが一番。オリバーが使命を理由に逃げるものだと。肉食系純情乙女強し!
そして迎える三人目の教師戦、デメトリオ討伐。
ここでも序盤が対教師戦とは思えない正攻法で、今回は爽やか(当シリーズ比)路線なのかな?なんて感想を抱きながら読んでいたら、、、そこから先が本番だった。
オリバーの一時ダウンの時に仇敵デメトリオによって暴かれるオリバーの過去、こいつがえげつない。理不尽を煮詰めて凝縮したようなエピソードの数々にあらゆる負の感情が渦巻く。その前に幸せなひと時を見せてから突き落としてくるのが性質悪い。エグいもの読ませやがって。しかし魔法使いの家系はこんなのばっかりか。そりゃあ歪んだ人間ばかりになるわ。
でもこれで、今まで何となくで理解していたものの多くが詳らかになった。風呂敷の7割くらいは公開したんじゃないだろうか。
オリバーの悲しい原動力も、従兄姉たちのオリバーに対する過保護の理由も、仇敵の非道さも理解した上で読む、次回からの見る目と熱量が変わりそうだ。