いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ロクでなし魔術講師と追想日誌 10」羊太郎(富士見ファンタジア文庫)

カニ狩りに行くぞ」セリカの一言でグレンたちは海へ向かう。そこにはとんでもない大冒険が待っていた!?-『セリカの南海大冒険』。イヴが住んでいた安アパートが全焼! イヴは必死に物件探しに挑むことになったのだが……?-『家なき魔術師』。ボクシング大会に参加したグレン。当初は懸賞金目当てだったグレンだが戦いの中で好敵手に出逢い-『熱き青春の拳闘大会』。
そして――グレンはその日、彼女の墓地に花束を捧げていた。“比類なき風にて優しき風、セラ=シルヴァース、ここに眠る”そう刻まれた墓碑の前でグレンは思い出す。二年前、ジャティスが引き起こした惨劇と、セラとの別離の瞬間を――


『ロクでなし』短編集がついに大台10冊目。
イヴ成分多めでお送りしています。人気投票一位は強い。



セリカの南海大冒険
内容:幻のカニを狩りに魔の海域へ

幽霊船に驚く幽霊に陽気な亡霊。幻の巨大蟹に海賊王の秘宝とロマンワードいっぱいの期待からは大きく逸れた、愉快な大冒険。
セリカがついてきている時点で大冒険になりようがないよね。知ってた。
でも21ページの挿絵が眼福だったのでよし! 但し、三人娘の水着姿がないのは致命的な欠陥と言わざるを得ない。



家なき魔術師
内容:イヴ、火事で住居を失う

最後にちゃんとデレる……だと!?
ツンデレを拗らせて残念負けヒロイン街道を驀進するイヴさんが、清く正しい正統派ツンデレを最後までやり切った。これは強い。システィとルミアが戦々恐々とするのも納得である。



熱き青春の拳闘大会
内容:地方の拳闘大会(賞金付き)に出る元執行官

安定の金欠スタートから、グレンが爽やかな青春の主役をすることになろうとは。
汚れ役兼オチ担当がグレンではなく、システィとイヴという珍しい話。こんな時でも欲を出さず健気に応援するルミアちゃんマジ天使。
で、二人はいくら儲けたんだろか。前の話の流れからして、イヴは全財産でも大したことないんだろうなあ……言ってて悲しくなってきた;;



Lost last word
内容:セラの最期

すでに本編で事実関係は語られているというのもあるが、思いの外セラの心情が語られる箇所が少なくて、国の上層部とジャティスにヘイトを貯める方がウェイトが大きかったように思う。本編に繋げる意味では正しい構成なんだろうけど、うーん。
状況的には厳しいのは分かるけど、もっとセラと語らって欲しかった。というより、こんな切羽詰まったシーンじゃなくて、グレンとセラに余裕があるシーンを切り取って欲しかったな、と。