いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「アストレア・レコード2 正義失墜 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 英雄譚」大森藤ノ(GA文庫)

後に『死の七日間』と呼ばれる、オラリオ最大の悪夢が訪れる――。
闇派閥(イヴィルス)による大攻勢にさらされた迷宮都市。街を支配した『巨悪』に抗う冒険者たちだったが、悪辣な計略、終わりのない襲撃、更には守るべき存在である民衆にも非難され、次第に消耗していく。知己を失い、自らの正義が揺らぎつつあるリューも同じだった。そして、そこへ畳みかけられる『邪悪』からの問い。
「リオン、お前の『正義』とは?」
崩れ落ちる妖精の少女は、黄昏の空の下で選択を迫られる。
これは暗黒期を駆け抜けた、正義の眷族たちの星々の記憶(レコード)――。


自分の信じる正義が脆くも崩れ絶望に沈むリュー。闇派閥との大劣勢の苦しい戦いの中で、自分のアイデンティティや存在意義、信じるものが揺らぎ、内なる葛藤と戦う冒険者たち。サブタイトルは『正義失墜』ではなく『自問自答』と付けたくなる第2巻。
上中下の真ん中とあって大規模な戦闘はなく、敵幹部は表に出て来ず、後手で劣勢の冒険者たちの苦しみが淡々と描かれていた。
それで、この人数の葛藤を全部網羅すれば、そりゃあこの厚さ(433ページ)になるよね。視点があちこちに飛びながらも、それぞれが丁寧に書かれた物語だった。要するにひたすら苦しいわけだが。
そんな誰も彼もが悩み苦しむ中、行われた邪神エレボスと神アストレアの語らい。
邪神の語る『悪』は『我儘』の延長で、アストレアの語る『正義』は正義というより『自由』とその責任の話。我儘を貫くことの全部が悪とは思わないし、自由を求めることが正義とはとても思えない。どちらの話もまるでしっくりこない。そもそも『正義』や『悪』なんて視点一つでコロッと変わるものだろう。なんて、そんな思考を巡らすことこそがこの2巻の意義なのかも。
また、リューと彼女が居たアストレア・ファミリアが主役だと思っていたが、今回の視点の半分以上がロキ・ファミリア。勇者フィンは持ち前の洞察力とペテンで冒険者を奮い立たせ、ベテランたちが戦線を何とか持たせ、無垢な幼アイズは本質を見抜く。この頃からオラリオの主役はロキ・ファミリアなんだなと思わせる話でもあった。まあそんなことより、幼アイズたんかわええ(*´ω`*) 可愛いは正義……ハッ! 答えはここに有った!←
次回完結編。確定しているバッドエンドの中にどんな光があるのか。