いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「アストレア・レコード3 正邪決戦 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 英雄譚」大森藤ノ(GA文庫)

全てを決する戦いが始まる――
迷宮から大最悪を喚び出しオラリオを破壊せんとする闇派閥と、迎え撃つ冒険者達。勇者は計略を巡らし、猛者は奮い立ち、正義の眷族は未来を求め希望を煌めかせる。
そして繰り広げられる正邪の決戦のなかで、冒険者達が手を掛けるは――誇り高き『英雄』の頂。
「『英雄』の作法を教えてやろう、小娘ども!!」
これは暗黒期を駆け抜けた、正義の眷族たちの星々の記憶――。


『正義』とは?『悪』とは? ある者は自分なりの答えを出し、ある者は答えが出ぬまま踏ん切りをつけ、それぞれの戦いに赴く冒険者たち。オラリオ最悪の一週間『死の七日間』完結編。

あれ? ジャガーノートに蹂躙されるんじゃなかったの? …(あちこち調べ中)… ああ、これはそれより2年前の話なのか。
2巻のラストで呼び寄せられた『大最悪(モンスター)』がジャガーノートだと思い込んでいて、バッドエンドに身構えていたので、思わぬグッドエンドに喜びよりもポカーンとしてしまった。
『大最悪』って結局なんだったんだろう。2人のサポートがあったとしても幼アイズ一人で抑えられる程度のモンスターに『大最悪』はどうなの?
なんて、『大最悪』の存在感が皆無だったり、主役が完全にロキファミリアで『アストレア・レコード』じゃなくて実質『ソード・オラトリア』だったり、ツッコミを入れたいところはいくつかあるが、それを差し引いても傑作だった。
それぞれの『正義』と『悪』をかけて戦う正邪決戦は、どこもかしこも自分の信念を信じ命を燃やす熱い戦いばかり。
中でも最も熱かったのが、六章「名前のない英雄達」。オッタルが“ベル君”してるだけで十分な盛り上がりなのだが、それ以上に胸を熱くしてくれるのが一線を退いたベテランたち。老兵が若者に未来を託し死地へ赴くその姿は、格好いい以外の形容詞が見つからない。
また、後半は今に繋がる事実が次々と明らかになっていく展開が熱い。
過去の英雄の真意が明かされたことで、フィンやオッタルが引っ張り、アイズがそれに迫り、ベルがその背中を追う今のオラリオが、散っていった英雄たちの願いの上に成り立っているのだと知れて、これまでの物語の深みがさらに増した気がする。六章の老兵たちといいLv.7の二人といい、王道の「俺の屍を越えてゆけ」をこんなに渋く格好良くやられたら感動しないわけがない。
おまけにボーナストラックのEXTRAにはまさかのベル君出生の秘密まであって、先人たちの願いに想いを馳せる最高のスピンオフだった。