いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「陽キャになった俺の青春至上主義」持崎湯葉(GA文庫)

陽キャ】と【陰キャ】。
世界には大きく分けてこの二種類の人間がいる。
限られた青春を謳歌するために、選ぶべき道はたったひとつなのだ。
つまり――モテたければ陽であれ。

陰キャの俺、上田橋汰は努力と根性で高校デビューし、陽キャに囲まれた学校生活を順調に送っていた。
あとはギャルの彼女でも出来れば完璧――なのに、フラグが立つのは陰キャ女子ばかりだった!?
ギャルになりたくて髪染めてきたって……いや、ピンク髪はむしろ陰だから!
GA文庫大賞《金賞》受賞、陰陽混合ネオ・アオハルコメディ!
新青春の正解が、ここにある。

第14回GA文庫大賞《金賞》受賞作


陰キャだった中学時代の自分を捨て、春休みの血の滲むような努力を経て見事高校デビューを決めた主人公が、何故か寄ってくる陰キャたちにも青春を謳歌させようと奮闘する青春ラブコメ
受賞作なので新人かと思ったら、5年以上書いている作家さんじゃないか。新人賞特有の詰め込みはないし、会話のテンポや掛け合いがやけに熟れているなとは思ってた。作者名でブログを検索したらダッシュエックス時代に『その十文字~』や『モノノケグラデーション』を読んだことがあった。ああ、あの人か。
その頃のイメージそのままに、清く正しい青春ラブコメという印象。陰キャ陽キャとカテゴライズして、その枠に人を当てはめたり自ら閉じこもったりするなよ!という主張を軸に、登場人物たちが青春を楽しんでいる作品。
陰キャやオタクと言われる、ラノベを読むメイン層の“俺ら”を主人公にしながら、卑屈になることなく変に偽悪的になることもなく、正しいことを正しいと声高らかに主張してくれているので、読んでいて気分がいいし読後感が爽やか。ただ、終盤はその「正しいこと」にこだわり過ぎて、説教臭くなっている面があるのが玉に瑕。
また、前述のとおり会話はテンポが良くて面白く、ストーリーラインもスッキリとしていて読みやすい。新人じゃないのでこういう言い方は失礼だが、《金賞》受賞作としては完成度の高い作品。
なんて、全体的なふわっとした感想に終始しているのは、これといって刺さるキャラクターが居なかったからなんだけど。強いて挙げるなら、いい先生風の雰囲気を出しつつクラスの問題を全部主人公に丸投げして、自らはひたすら小麦を摂取しているちゃっかり者の小森先生はなかなかいいキャラだった。でも、この物語だと先生はどうしたって裏方だからねえ。