いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 18」大森藤ノ(GA文庫)

白妖精は誓う。女神に捧げる忠義を。
黒妖精は刻む。ただそれだけの想いを。
小人は哭く。四つの後悔を力に変え。
戦車は進む。女神以外全てを切り捨て。
そして、猛者(おうじゃ)は問う。
夢想でも詭弁でもなく『力』の証明を。
「この身を超えられぬ者に、『女神』を救う価値などなし」
誰も、何も間違っていない。
ただ女神を想い、己(エゴ)を貫いて、かつてない『大戦』を駆け抜ける。
だから、誰よりも傷付き果てる少年は――黄昏の空に、『偽善』を告げた。
「あの人を助けるって、約束したんだ」
これは少年が歩み、女神が記す、
──【眷族の物語(ファミリア・ミィス)】──


オラリオ二大ギルドのフレイヤ・ファミリアとベルの居る弱小ギルトヘスティア・ファミリアによる、ベルを掛けた『戦争遊戯』が開幕。ヘスティア・ファミリアはどれだけ支援者を募っても大丈夫なルールだが、肝心の最大勢力ロキ・ファミリアの参入は禁止。絶望的な戦力差をどうやって覆し、ベルの未来を守るのか?“フレイヤ”の章、完結編。
いやもう、準備段階からどん底まで突き落とすぜ!って気配がむんむんで序盤から戦々恐々。
本戦には出られないロキ・ファミリアも準備の手助けはO.K.ということでアドバイスや稽古をしてくれるのだけど、その彼らの必死さが逆に不安を煽っているて、余計に悲壮感が漂うという。それにしても七章の章タイトルが酷いwww 
そして本戦、開幕早々案の定の蹂躙戦。
半分も行かないうちに(とはいっても普通の文庫本一冊分だが)、味方全員ボロボロでどうすんのこれ?な状態。でもそこからがやっぱり『ダンまち』。必然の窮地の連続の中、これまで縁を繋いできた者たちが、次から次へと助けに入るシンプルに熱い展開。こんなの燃えないはずがない。
中でも最高のタイミングでベルの助けに入ったリューのエピソードが最高だった。
外伝『アストレア・レコード』を読んでいたら感涙必死な大幅パワーアップの理由とそれに込められた想い、ストレートで心を打つ途中の告白、エピローグでのシルに対する思いの吐露。リューにまつわるエピソードは、これまで彼女が主役の外伝の集大成のようで、どのシーンでも感動しっぱなし。今回、終盤以外ではあまり活躍がなかったベルよりも主役をしていたような気さえする。
他にも『豊穣の女主人』のメンバーそれぞれの戦いや、ヘディン師匠の一人の女性に対する深い愛情と弟子に対するツンデレなど、燃えるシーン目白押し。
欲を言えばこの『戦争遊戯』の前提条件が恋愛事じゃなければな、とは思ってしまった。
この章の主役・フレイヤ様にさほど思入れがないので、エピローグでこの戦いの発端を思い出さされると、急に熱が冷めてしまったというか、余韻がなくなってしまったというか。何とも言えない脱力感が。
それに恋愛系の話でいうと、最推しヒロインのアイズがこんな激熱展開だったのにもの関わらず、契約で蚊帳の外だったのが大変不満。もうリューさんに周回遅れにされてそうなんだが。
この巻単体の『戦争遊戯』は文句なしで熱かった。しかし章という括りだと上手く感情移入できなくて少し心残り。
新章は『学区編』。楽しみだが、またダンジョンには行かないんだろうか……