いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「私たちの金曜日」(角川文庫)

ストレスから職場を転々とする会社員、小壜をロッカーに隠し持つミステリアスな同僚、上京した売れない地下アイドル、30歳の誕生日を迎えた小説家、育ち盛りの子供を抱える自衛官パイロットなど……思い通りに仕事をすることが叶わないなかで働く様々な女性たちを描いた短編7作品を収録。
周りと比べたり、羨んだり、もう辞めてやると思ったり。それでもなぜ、私たちは働くのか。「働く」の今を知るためのアンソロジー


女性作家の短編の中から働く女性を描いた作品を集めたアンソロジー
……というコンセプトの短編集だったとは知らず『有川ひろ』の文字に釣られて買って、既読だと分かった時の悲しさよ。。。



社畜山本文緒
内容:仕事への情熱がない女性の話
会社の、上の言いなりで自分が無いという点ではそうだが、嫌になったらすぐ辞めそうな彼女は社畜に入るんだろうか?



『美女山盛』田辺聖子
内容:美人に媚びる男たちとそれを冷めた目で見る女性の話
今ならセクハラのバーゲンセールなザ・昭和なオフィス描写が懐かしい。
どうしようもない男たちの馬鹿さを書く話かと思わせておいて、最後は男も女もどっちもどっちになるオチが秀逸。



『こたつのUFO』綿矢りさ
内容:三十路の誕生日を一人で迎える小説家、物思いに耽る
その場では仲良くなれるけど、いったん離れたら連絡しない友人・知人への感覚に深く共感した。



『茶色の小壜』恩田陸
内容:使える女性社員の隠し持っている小壜の秘密とは?
優秀なのに影がある女性のミステリアスさと、不気味さを残す結末。短いながらもサスペンスとしての面白さは十分。
但し、本作を働く女性アンソロジーに入れるのは大いに違和感がある。



『神様男』桐野夏生
内容:地下アイドルになった長女とアイドルになりたい次女を抱えた母親の話
とても気持ち悪い。
たぶんそこを目指して書かれているので、いい言葉ではないが感想としては間違っていないと思う。
どこかおかしいアイドル業界の慣例と、どこかおかしいオタク男の言動。アイドル業界の闇までは行かない業界に蔓延る異質さや、オタク文化を傍から見た時に感じる気持ち悪さを端的に的確に描いた秀作。



『おかきの袋のしごと』津村記久子
内容:お菓子のパッケージの豆知識コーナーを任された派遣社員の悲喜交々
一つの仕事に対する、始まりの不安、上手くいきだした時の達成感、絶頂期の充実感、次第に重荷にプレッシャーになっていく下降期。短いながらも働くということの楽しさと苦しみの全てが詰まっていた。また豆知識を扱う死語とな為、雑学好きとしては蘊蓄欲も満たされて嬉しい。
収録作で一番面白かった。



『ファイターパイロットの君』有川ひろ
内容:パイロットの奥さんを貰った男性が子供に馴れ初めを語る
何度読んでも光稀さんの不器用なツンケン具合は可愛い。