いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「語らいサンドイッチ」谷瑞恵(角川文庫)

靱公園に面する『ピクニック・バスケット』は、笹子と蕗子の姉妹が営む小さなサンドイッチ店。いつかどこかで食べた記憶の味と想いを結びつける笹子のサンドイッチは、お客さんの心を癒してくれる。ある時、姉がフランス帰りのシェフである元彼と急接近していることを知った蕗子は、自分たちのお店がなくなるのではと不安を感じていた。妹の心配をよそに、笹子は後輩の結婚パーティ用のサンドイッチ作りに励んでいて――。


大阪の公園の片隅にある姉妹で営むサンドイッチ店の物語、第2弾。
元々優しい空気感の作品だったのだけど、姉の笹子や常連の小野寺さんに影響されたのか、妹の蕗子他一部余裕のなかった人たちも丸くなっていて、作品の雰囲気がさらにほわほわ柔らかくなった。
そんな陽だまりのようなお店で作られるサンドイッチは、想い出のキュウリ、今は亡きカフェの裏メニュー、戦時中に食べた謎のジャムパンなど、訪れた人の思い出の味を探るサンドイッチ。
その人を知り、その場所を探り、過去を想像し、その人に寄り添った味を作り出す笹子のサンドイッチに心が温かくなる。それに単純に美味しそうで、料理や食べる描写はそれほど濃くないのに食欲をそそられる。想像しやすいサンドイッチというのがいいのかも。
また、各話(全5話)の訪れたお客さんのエピソードの裏で少しずつ進んでいたのが姉妹の恋の話がまた良い。姉の終わった恋と妹の始まりそうな恋の対比が、どこか残酷で切なくて、でも優しさと甘さもあって何とも言えない余韻がある。
話の流れとしては次(単行本版でそろそろ発売予定)は、蕗子の恋の話が中心になるのかな?