四季折々の植物が生い茂り、猫が訪れる古民家で、隆司と暮らしはじめた七穂。抜群の家事能力を生かして立ち上げた家事代行サービス「KAJINANA」には、「対等で完璧な折半」を目指す共働き夫婦や、幼い娘のために亡くなった妻のカレーの味を再現してほしいという夫などから、さまざまな依頼が舞い込んでくる。目下の悩みは仕事に理解のない母・恵実子との関係だが、思いがけず母の過去を知り――。
心を満たすおいしい料理満載の好評シリーズ第2弾!
個人で家事代行サービスを立ち上げた七穂と、派手に挫折したエリートな従兄・隆司の古民家同居生活。互いに想いを伝え合ってちゃんとした同棲生活スタートな第2巻。
祝、続刊! 綺麗に終わったと思っていたので続きが読めて嬉しい。
1巻は絶望の淵にあった隆司が立ち直る物語だったが、2巻は主人公・七穂がメイン。
前半はまずは彼女の仕事ぶりから。
多忙で家事の分業が崩壊した夫婦(一章)と、妻の急逝で父一人子一人になった家族(二章)の救世主に。
一章ではフリーの仕事人としての不安を同じ立場で、しかも何気ない言葉で奥様を救っていく七穂。二章では卓越した家事能力で華麗(カレー)に親子の危機を救っていく七穂。どちらもお客さん視点なのもあり、自分に出来ないことをサラっと熟していく姿が素敵。
後半は七穂と母の確執の話へ。
本人がバリキャリで安定した職だけが正解の母と、安定=いつも同じ仕事には耐えられない娘。意見が噛み合うはずもなく。
前半の七穂の有能ぶりを読んでいると、頭でっかちの母に怒りを覚えるが、そんな母もその母(七穂の祖母)の理不尽な価値観によって泣かされる結末に、色々と考えさせられる。
親子であっても他人は他人で、正解の基準は人それぞれ。価値観が平行線の相手では、どちらかが納得するという決着はどちらかが言い負かされたか諦めた結果であると考えると、双方が怒って泣いて付き物が落ちたところでの和解という落としどころは、痛み分けではあるものの平和で公平な決着なのかも。何より喧嘩別れよりは全然良い。
そんなわけで、七瀬を含めどの話も日々の生活が上手くいっていない人の人生が好転していく話で心が温まる話で良かった。
一つ不満があるとするば隆司と同棲してる感が薄かったこと。
七穂がメインな話ではあるけれど、隆司の存在が帰ったらいる同居人でアドバイザーの域を出ないのは寂しい。1巻のラストで情熱的な告白をし合った男女が一つ屋根の下にいるとは思えない淡白さ。
続きがあるなら七穂と隆司の二人の物語が読みたい。