歩夢に敗れて初めての失冠を経験した八一は、一つの想いを固めていた。そして自らの意思で銀子の元を訪れる。
「銀子ちゃん。将棋を指そう」
「将棋を?」
「そう。俺が勝ったら――」
その一方、天衣との激闘を制し、将棋を続けられることになったあいは、深刻なダメージから回復できずにいた。
追い詰められたあいは一発逆転を狙い星雲戦の本戦に臨み……そして遂に二人の天才が相見える!
「弟子をグチャグチャにすれば八一さんも本気を出してくれるよね?」
現実に抗う棋士たちの姿を描く将棋ラノベ、いよいよ最終盤の19巻!!
良かった。物語に熱が人が戻ってきた。
18巻が思い切ってSFに舵取りをした内容で未来の予想・夢想が興味深い反面、人間味まで削ぎ落してしまい、人対人が熱く面白いシリーズの醍醐味がごっそりと削られてちっとも熱くも面白くもなかった。シリーズ最終盤になにやってるんだ?と困惑と軽い失望を感じたのをよく覚えている。
それが今回は一転、八一が前回の敗戦と失冠で憑き物が落ちたようになんか急に落ち着いて人間味を取り戻していた。
メインの対局こそ対戦相手がコンピューターのようで熱を感じさせない天才小学生棋士で、かつアンタッチャブルな終局図のインパクトが強くて、対局自体にはあまり熱を感じなかった。師弟の絆という感動シーンはあったけど。でも、それ以外の場面では熱さが戻りつつあった。
八一の「熱い」は序盤のプロポーズ。お相手はもちろん表紙のあの人。
本人へのプロポーズは不器用で捻り皆無(おまけに無精ひげ付き)なのに、その母への口説き文句はめちゃくちゃ格好良いという、ちぐはぐさが八一らしくて良い。
そして、この巻で最も熱かったのが、茨の道でプロを目指すあいに味方をしてくれる女流棋士たち。
恋も将棋もライバルで蹴落としに来てもおかしくない妹弟子・天衣の全面バックアップに、自分の立場と能力ではあいへの援護射撃ができないと人目を憚らず大泣きする鹿路庭。それに感化されて、いつもはオチ担当の燎までもが吠える。しかも全国放送で。あいの愛され具合と、女性棋士たちの友情と切実な願いに目頭が熱くなった。
そのあおりを受けて、かどうかわからないけどオチ担当に臨時登板してた人が一人。桂香さん……ツヨクイキテ……
ついに残り1巻(本編は)
最も熱い対局はヒロイン対決になりそう。
二人とも死亡フラグを立てまくっているので不安いっぱいだが、本人たちも読者も燃え尽きて真っ白になるほどの熱い対局、待ってます。