沙季の様子がおかしい――。どこか機嫌が悪そうで、けれど悠太が大丈夫かと問いかけても笑顔で「大丈夫」と答えるだけ。
秘密。共有されない悩み。それは「すり合わせ」を良しとする二人の関係では珍しいことで、悠太は沙季の状態を心配する。
以前ならどうすればいいかわからず、適切なコミュニケーションを取れなかったかもしれない。だが今は一年以上を共に過ごしてきた経験がある。彼女のことを知り、関係を深めた今だからこそできる支え方もあるはずだと、悠太は沙季のためにできることを実行していく。悠太の成長と“好き”の感情、はじめての家出、温泉旅行。置き去りにした過去と対峙し、“兄妹”は大人へと成長する――。
沙季の人格形成に(主に悪い意味で)大きく影響した実父との対面。沙季にとって大きな節目となる12巻。
実父との面会の予定が入りナーバスになっている沙季と、その予定を知らずにいつもと様子の違う沙希を心配する悠太。心配した言葉は「大丈夫」と誤魔化され……
家族になったばかりの頃なら拒絶されればすぐに引き下がっていただろう悠太が、一歩踏み出して沙季の問題を知ろうとし自分に出来ることを考える。恋人であり兄である事実と、これまで様々なことで考えをすり合わせてきた実績を持って踏み込んだ大きな一歩に、関係が深まっていることが感じられて嬉しくなる。他人には絶対しないお節介をする、実に家族らしい。
その考えの内容が、中々思い切っていて驚いたけど。
面会から逃げるために勉強合宿と称して二人で一泊家出in熱海。しかも親公認。なんだそれw ツッコミどころが多すぎる。これ、親二人はすでに気づいていて、そうなってもいいと思ってるよね。
そんな熱海旅行、ちゃんと勉強はして、兄が妹の悩みを聞いて、実父に対面する勇気を与えて、寝る前にちょっとふざけ合って……口絵は新婚旅行チックなのに、中身はしっかり兄妹のやり取り。お兄ちゃん頑張った。挿絵の沙季の表情がみんな柔らかいのは悠太の功績だ。
ちなみに引っ張って思わせぶりに出てきた実父は、自分の考えが絶対なよくいるタイプで、あまり印象は強くなかった。二人の物語なのだから、モブはモブらしく雑音は小さい方にこしたことはないか。
次回、二人で年越し編(予定)。負けず嫌いの地を出すことを躊躇わなくなり、最後の日記でめっちゃデレていた沙季。二人きりになった時の甘い空気に期待したい。