いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「聖獣王のマント」紅玉いづき(メディアワークス文庫)

聖獣王のマント (メディアワークス文庫)

行き場もなく夜の街をさまよっていた家出少女チル。ある夜、路地裏に突如降ってきた黄金の髪を持つ美しい男。その口が発したのは――「うまれかわりを、のぞまれますか?」「我が王よ」
かくして、チルは異世界に取り込まれる。破れたマントを胸に抱えて迷い込んだのは、かつて豊かな織物の国と呼ばれた動乱の国リスターン。
一度はすべてを諦めた無力な少女は、荒廃した国を救い、王となり得るのか。少女文学の旗手が贈る、ドラマチックロマンファンタジー


親に愛されず夜の街を彷徨う浮浪少女が生まれ変わりを願ったところから始まる異世界転生ファンタジー
これぞ紅玉いづき異世界転生。
突然連れてこられた異世界。隣国の侵略で滅亡の危機に瀕している砂漠の国で、国を富ます謎の能力を与えられ、右も左も分からぬまま周りの大人たちに振り回されながら、それでも少女は生きていく。
自ら生まれ変わりを願ったとはいえ、数奇の運命と過酷な状況に翻弄されている少女に、生きることを、自分の道を自分で選択することを強いる。その獅子が我が子を千尋の谷に落とすような容赦のなさが紅玉先生の作品らしい。でも、その厳しさがあるから、何度も何度も泣きながら、それでも自分の進むべき道を見定めていく少女の姿に生命力を感じて光り輝いて見える。読んでいてパワーをもらえる
そんな感じで実に「らしい」作品で良かったのだけど、どうしても気になってしまうことが。
それは転生方法とか世界や国の仕組みとかが『十二国記』にとてもよく似ていること。『十二国記』は全部読んではいないけれど、流石に一作目は知っている(一作目と思っていたそれは実は二作目なのはググって初めて知ったけど)
似たような設定の作品が次々と出版される中で、既存の作品と被らないとはほぼ不可能なのはわかっているけれど、媚びない靡かない姿勢を見せる作風なだけに、有名どころの設定は意識して避けて欲しかった。