青い波が打ち寄せる浜辺にぽつりと佇む小屋は、料理上手なネコシェフの店。ここに辿り着くのは、仕事や恋愛、子育てなどに悩み「現実から逃げ出したい」と切実に願う人ばかり。マイペースで饒舌なシェフは、旬の魚を使い腕をふるう。ホッキ貝のチャウダー、土鍋で炊いた鯛めし、タルタルたっぷりアジフライ――美味しい料理にほぐれた心の中にある本音に向き合った時、小さな一歩を踏み出せる。疲れた心にそっと寄り添う物語。
夫に浮気されている専業主婦、妻子ある男性と浮気を繰り返す女性、就職と友人関係に悩む女子高生、娘を嫁に出した母親、自分の仕事に自信が持てないデザイナー。言いようのない不安や、発散できない鬱憤を抱えた女性たちが、ネコシェフの料理でホッと一息。もうひと頑張りする元気をもらうハートフルストーリー。
人生に行き詰った人が不思議体験を機に人生が好転していくよくあるタイプの話で、特に目新しさはなかったが、ネコシェフのキャラクター性と使い方が良かった。
主人公が爆発する寸前に現れ、冷静になる時間をくれる絶妙な登場タイミング。俳句のセンス。粗野だけどある含蓄と温かみの言葉。そして美味しそうな作り立ての海鮮料理。
ただ、あらすじの「小さな一歩を踏み出せる」「疲れた心にそっと寄り添う」の部分には少々疑問が。
ネコシェフに合った結果が、よく言えば開き直ったとも取れるけど、後先考えずやけになった、捨て鉢になった様に感じられるラストが多いのがその理由。それと結果が語られないので、好転したのか悪化したのか現状維持なのか分からないこと。現実的に考えてしまうと、その後事態が悪化しそうな話の方が多いので、読後感はかなりモヤっと。
あとは主人公が全員女性だった所為なのか、主人公たちの悩みに全面的に共感は出来なかっのもあまり楽しめなかった要因かも。
「ぶたぶた」さんみたいな美味しい&ホッとできる物語を読みたかったのだけど、ちょっとタイプが違った。自分にはあまり合わなかった。