「勇者ハルヒよ」
気づけば王宮にいた俺たちは王様から邪悪な魔王を倒すよう依頼され――って、ちょっと待て、この『世界』は何なんだ?
わけが解らないまま朝比奈さんの魔法が炸裂して任務達成かと思いきや、長門の「ミッションインコンプリート」の呟きとともに宇宙空間へ飛んだかと思うと舞台は西部劇、果ては神話世界へ――。これはいったい誰の仕業だ。そしてハルヒ、今度のお前は何を想っているんだ?
奇想天外の第13巻!
剣と魔法の世界で魔王退治、宇宙パトロール隊になって宇宙盗賊狩り、西部劇の世界で賞金稼ぎに・・・いつものメンバーに別ジャンルで色々させようというキャラクター小説の長期作品の短編では大変よくある話な前2/3。後ろ1/3は古泉先生(+長門教授)による量子学・量子力学概論。その温度差と混沌さが実にハルヒな一作。だったのだけど、うーん……
前の異世界変遷パートはハルヒのせっかちな性格はよく出ていて、そのおかげで一つ一つの話が冗長にならずにテンポよく進んでいた。ただ、その性急さが災いして他のキャラが空気に。長門なんて途中まで居たんだか居なかったんだか。
後半の古泉を中心とした考察と対策パートは、古泉探偵のくせになる語り口に、キョンの鋭いツッコミ、フルパワー長門のちゃぶ台返しとらしさ全開。それにトロイア戦争(劇)でドロドロ&ドンパチしているのを背景に量子力学を語る姿は、絵を想像するとシュールで素敵。ただ、テーマが理系人間でも理解が難しい量子力学がテーマだったばかりに、説明の内容は解ったような解らないような、煙に巻かれて微妙な気分に。
そして、みくるちゃんは最初から最後までずっと空気。
前後どちらのパートもハルヒらしさは出ていたとは思うのだけど、キレがないというかインパクトがないというか。久々で自分の中のハルヒへのハードルが上がりすぎていたのかもしれない。