いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「それは、降り積もる雪のような。」有澤有(GA文庫)

それは、降り積もる雪のような。 (GA文庫)

人生は、コーヒーのように苦い。そう言って憚らないドライな高校生・渡静一郎は、とある事情により、知人一家の喫茶店に住み込みで働きながら高校生活を送っていた。
そんな静一郎はあるとき、学校の同級生・菫野澄花が自分に好意を抱いているらしいことを知ってしまう。
しかし静一郎には、澄花に応えるわけにはいかない事情があった。なぜなら――澄花は静一郎が居候中の菫野家の一人娘。一つ屋根の下で暮らす、家族同然の相手だったから。
「ねえ静一郎くん、もしかして……わたしのこと避けてる?」
想いは、静かに積もっていく。真冬の喫茶店で紡がれる、不器用な2人の心温まる青春ラブストーリー。


お世話になっている家に大きな負い目のある訳ありの居候な主人公・静一郎と、祖母の喫茶店を存続させるために奮闘する少女・澄花。老舗の喫茶店を舞台にしたひとつ屋根の下青春ラブストーリー。
ラブまでいかない青春ストーリーが正解かな。自分のことに精一杯で恋だとか誰かを好きになる気持ちだとか、そこまで気持ちに余裕がない少年少女の物語なので。
相手に好意は感じていても、自分のことに手一杯でそれどころではない。そのはずなのに、お互いのことが気になって相手のリアクション一つに嬉しくなったり不安になったり。外野からの色々なことに揺さぶられ、自分のネガティブな思考が頭の中をぐるぐるしてドツボにハマったり。そんな思春期の不安定さが、男の子の方は直接的に、女の子の方は間接的にどちらも丁寧に描写されていた。
但し、主人公の少年が卑屈過ぎるのと逃げ癖にイラっとする場面が何度かあったので、個人的には主人公との相性はあまり良くなかったかも。生い立ち上仕方のない面はあるけれど。
あとは周りの大人があまりに無責任なのが気になる。二人の特殊な状況を作り出す設定であることは分かっているけれど、この親じゃなければこの二人のこんなに苦労も苦悩もしなくていいのにと思ってしまった。それだと物語が生まれないのかもしれないけど。
と、気になる面は多々あるものの、思春期の少年少女の物語という肝心な部分は良いアオハルが感じられる良作だった。