どんなときでも喫茶店でのひと休みと「物語」が私たちを癒してくれる--。
アルバイトを始めた憧れのカフェで。高校時代の親友と訪れたルノアールの貸し会議室で。紅茶占いが名物の洋館で。マスターがあらゆる「告白」を受け入れてくれるカウンターで。こちらとあちらの世の中間にある茶屋で。
お茶の時間に交錯する人間ドラマを描き出す極上の6篇を収録!
悩める主人公・喫茶店・アフタヌーンティーもしくはイブニングティーをテーマにした、6名の作家によるアンソロジー。
感想は各話事(著者敬称略、ネタバレあり)
サロンエプロン 青山美智子
内容:オープニングトーク
著者のデビュー作『木曜日にはココアを』を思わせる喫茶店に登場人物ではあるけれど、如何せん詩的で短かいので「これから喫茶店の物語が始まりますよ」という開幕の言葉、もしくはアニメのOP曲的な立ち位置なんじゃないかと。
「痛い人生設計を作る、ルノアールで」朱野帰子
内容:アラフォー女子二人、ルノアールの貸し会議室で妄想人生設計を作る
都立高校時代に出会い親友になったヨンとモッカ。三児の母になったヨンと小説家になったモッカが約二十年ぶりに再会するという話。
つまらない人生なんて何が面白いんだ、偏った常識に捕らわれた舅/編集者なんてクソ食らえと、タイトル通り痛い人生設計をしながらお馬鹿な話をしているのだけど、ヨンさんがパワフルで面白く、その親友になったモッカ先生もやっぱりおもしれー女で。そもそも約二十年ぶりに会ったのに、会ってすぐ一緒にバカなことができる二人の関係性が素敵だ。
読んでいるだけでポジティブになりパワーを貰えているような気がする、そんな陽の気を放つ物語だった。是非モッカ先生には直木賞を獲って声高々に言いたいことを言ってもらいたい。
「究極のホットケーキと紅茶占い」斎藤千輪
内容:週末の夜にだけ開くティーサロンで恋愛相談
相談者の彼氏の不可解な行動の理由を探る日常ミステリ風味な一篇。
日本の常識と海外の常識、文化の違いの話題は興味深く為になる。
ただ、キャラクター小説らしいキャラ配置なのにキャラクターがあまり好みではなかったかな。
「不純喫茶まぁぶる」竹岡葉月
内容:雨上がり、病院帰りの女子高生がレトロな喫茶店に入るところから始まる
レトロな喫茶店に飛び込んだ女子高生の話、を妄想する売れない漫画家、の話を書く喫茶店の常連客の作家。いったい、どれが現実でどれが創作か。煙に巻かれた気分になる不思議な話。
女子高生が竹岡作品らしい元気っ子でいいキャラだったのだけど、漫画家パートがあまりに現実的なので、どうしてもそちらに引っ張られてしまう。
「彼と彼女の秘密と彼」織守きょうや
内容:聞き上手なマスターがいる喫茶店「キルヒェ」
気になっている弓道部の女の子の秘密を知ってしまった高校男子がマスターに相談するところから始まる物語。
まさかの二段オチに驚く。
三つの恋の話なのに、甘味よりも苦味と酸味が濃いまるでブラックコーヒーのような味わい。喫茶店の話にふさわしい一篇。
「浮島 イルフロッタント」小川糸
内容:彼方と此方の狭間で茶屋を営む元地縛霊のご婦人の物語
亡くなった方が今わの際では食べられなかったであろう好物を、最後に思いっきり食べて逝ってもらおうという「ナカマ茶屋」。そこで店主である女性がお客さんの話を聞いたり、自分の生前の話をする。
語られる現世での思い出話が昭和チックでノスタルジーな気分になる一篇。
