コルを殉教者に仕立て上げようとした異端審問官ローシェと選帝侯たちの非道な計画は、空から駆け付けたディアナの協力により砕かれた。
無傷の生還という偉業は、帝国内に薄明の枢機卿の名声をますます轟かせ、コルを一目見ようとウーバンは謁見を願う者たちで溢れかえることに。
そして、多忙な兄を支えるミューリの下にも真面目で頑固なコルを説得してほしいと陳情が集まり……。
そんな中、薄明の枢機卿の暗殺計画が再び持ち上がって!?
上下巻でお贈りする、賢狼の娘と若き羊皮紙が世界を変える運命の前夜祭!
ウーバンでの事後処理に追われながらも、各陣営が公会議に向けて動き出すシリーズ12巻。
我等が主人公、またしても“コル坊や”に戻る。
前回までの事件の解決策である南へ道を通す事業は計画を立ち上げたばかりで、まだまだ問題は山積み。そこには当然多くの利権が絡み、それに乗じて悪い奴らが沢山寄ってくる。子供でも少し考えればわかりそうなことを理解せず、八方美人ですべての意見を聞き、理想論という夢物語で無尽蔵に仕事を増やすコル坊や。まるで方々にいい顔をするために無駄に仕事を増やす現代の政治家の様だった。これはミューリがブチギレて、不穏な序幕になるもの仕方がない。
基本はポンコツなのはわかっていたつもりだけれど、今回は特に酷い。事が上手くいったからといって調子に乗るタイプではないはずだけど、思考停止しているというか頭がお花畑というか。
一方のミューリは成長著しいところを見せてくれた。喧嘩するまでは騎士の仕事を全うし、肝心の兄様が使えないと見るや周りの大人たちに助力を乞う。辛抱強くなっているし周りがよく見えている。全くどちらが大人なんだか。
そして、この巻最大の特徴はミューリが助力を求めた人々、サブキャラ視点が多く入った群像劇であること。あとがきによると『狼と香辛料』シリーズでは初の試みだったようで。外野からのコルとミューリの印象を知れる絶好の機会になっている。
永い時を生きてきた人ならざる者たちや擦れた王族から見た二人は、極めて危なっかしく(ですよねー)、呆れるほど真っすぐで、中てられて自分も何か行動をし始めてしまうほで眩しく光り輝いていた。あの悪辣なエーブも含めてみんなどこか親目線で、公会議の勝ち負けよりも、薄明の枢機卿が傷つかないことを第一に動いているのが印象的。みんな過保護だなーと思いつつ、そうしたくなる魅力ある二人なのもよくわかる。
薄明の枢機卿陣営(本人以外)の公会議への準備を見ながら、最終決戦を前に一旦外側から全体像と中心にいる二人を眺められる、そんな物語だった。主人公は……本番は頑張ってくれるでしょう。きっと。
