ちょっとポンコツでアイドルオタクの医学部生・滝沢冬吾は、推し活で参加したフェスの帰り道、電車で乗り過ごし無人駅にたどり着く。そこで知り合った少女。はじめは距離の近い彼女を警戒していたが、彼女の優しさと行動力に冬吾は徐々に惹かれていく。名前も知らないまま別れたことを後悔していた冬吾だったが、夏休みの推しのライブで再び彼女と巡り合う。なのに、彼女は何故か他人行儀で――?
アイドルオタクの医学部生がフェスの帰りに、電車で乗り過ごした無人駅で一人の少女に出会ったことから始まる、不器用男子と双子の姉妹の三角関係の青春ストーリー。
柏原先輩がやけに男前だったり、飯島と恵麻が順調そうだったり、シリーズを追ってきた人には楽しめる要素はあちこちに散りばめられているのだけど、本作単体でラブストーリーとして面白かったかと言われると、かなり微妙。
離婚している両親、束縛の強い母親、ADHDと診断されそうな本人の性質……流石に背景が重すぎたのでは? シリーズのコンセプトとして、恋愛に向いてない若者たちの不器用な恋愛模様というのがあると思うのだけど(たぶん)、主人公の注意散漫さが度を越していて、彼の行動にはハラハラさせられることはあっても、恋愛的なハラハラドキドキ感はほとんど感じられなかった。
お相手のくるみも過去の心の傷に囚われていて、人と距離をとることに精一杯で「妹が好きになった人だからダメだと思っているのに惹かれている」みたいな、三角関係のならではのジレンマはなかった。
そういった三角関係や恋愛の醍醐味を、唯一味わわせてくれた双子の妹・このみだったのだけど、そんな彼女に何の報いもないのが皮肉な話だ。彼女にこそ幸せになってもらいたいが……。
過去の失敗や経験で、自分に自信がなくなっていた二人が手を取り合って前を向けそうな、未来が明るいラストは良かった。でも恋愛小説だと思って読んでいるので、そういう点では読者が恋愛模様を楽しめるような主人公とヒロインではなかったのは残念だ。
