身勝手な探偵気取りの行為で、高校生の朝河探は一年前、相手の逆恨みから妹に大怪我を負わせた。以来、朝河は他人の問題に関与することに抵抗感を抱いていた。しかしある日、同級生の青山景が万引きの疑いをかけられる。朝河は青山の何もかもに諦めきった表情に突き動かされて、青山にかけられた冤罪を晴らす。何かと朝河に話しかけてくるようになった青山と関わるうちに、二人の距離は近づき、朝河は青山の過去と母親との確執へ行き着く。青山の母が犯した罪の真相に協力して辿り着き、さらに関係性が前進したその直後、朝河の過去が朝河自身に襲い掛かる――!?
事件が新たな事件を呼び覚ます学園青春ミステリー。ここに開幕!!
講談社ラノベ文庫新人賞受賞作
何やらK鳩J悟朗のような葛藤を抱えている主人公がいると聞いて。この作品の出版がアニメ小市民シリーズが丁度『冬季限定』に差し掛かったところだったのは偶然なのか意図的なのか。
過去に自分がした探偵気取りの推理の末に妹が傷つけられた過去を持つ主人公・朝河探が、孤高の同級生・青山景に掛けられた冤罪を晴らす為に動いたことから始まる学園青春ミステリー。
探偵もののロジックは微々たるものしかないのでミステリというのはどうかと思うが、日々に感じる息苦しさや自分の持つ傷と向き合わなくてはならない思春期らしい葛藤、そういったものを等身大に表す青春ストーリーとしてはとても良かった。
どんなに小さなミスでも、どんなに周りが気にするなと言っても、気にしてしまう生真面目な人というのはどこにでもいるもので。主人公とヒロインはまさにそういうタイプ。
傍から見ていると「身勝手な逆恨みに責任を感じることなんてない」としか言えない内容ばかりなのだけど、当事者は真に受けて気に病んでしまう。そこに真面目な子ほど生きにくい学校という枠組みの難しさが加わって、悩み多き年ごろの高校生が日々感じる生き辛さが生々しく表現されている。これも青春ものの一つの形だろう。
なんて真面目な感想を書いてみたが、本作の一番の魅力はヒロインの不器用な献身とデレ具合にある。
誰にも靡かない一匹狼な第一印象とつっけんどんな口調とは裏腹に、過干渉なほど構ってく懐いている様子、フラッシュバックもあり時々テンパる主人公への的確なフォロー、主人公にだけに送る優しい言葉と優しさに溢れている。最後に明かされる構い始めた動機には誠実さが感じられるし、素直に褒められると弱い可愛らしさもある。これはいいヒロインだ。
程よい甘さと程よい苦さで青春を堪能できる一冊だった。良作。
