いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「フロスト・クラック ~連続狙撃犯人の推理~」時雨沢恵一(電撃文庫)

フロスト・クラック ~連続狙撃犯人の推理~

日本で起きている連続狙撃殺人事件をご存知ですか?
――ある日、海外に住む男のもとに、若い警官から突然電話がかかってくる。猟銃が使用されたと思われる事件。その警官は、犯行の状況を語り、かつてハンターだった男に推理を求める。男は、自らの想像を語り、実行犯のトリックを暴いていく。見事な推理だと喜んだ警官だったが、事件はそのまま解決へとは向かわなかった。

全てが電話の会話だけで構成されたクライムサスペンス。
複数の人物が織りなすその物語が示した衝撃の結末とは――。


日本で起きている連続狙撃殺人事件の真相を巡る、当事者たちの電話の会話だけで構成されたクライムサスペンス。


クライムサスペンスとは何ぞや?

犯罪(クライム)を題材とし、登場人物が事件の渦中に身を置き、読者や視聴者に緊張感や不安感を与えるジャンル

なるほどピッタリだ。
事件の犯人を探るのではなく、事件と動機と実行方法が当事者たちの会話によって次第に明らかになっていく物語なので。その方法の半分くらいが銃器の説明なのは、まあ時雨沢先生ですからw
また、地の文がない分テンポが早く、会話している時には事はすでに済んでいる為、当事者たちの口から新たな事実がどんどん出てくるのが特徴。なので読者に考える余地はあまりないが、その分次から次へと押し寄せるショッキングな事実に読む手は止まらなくなる。
それと同時に、会話の中に滲み出る当事者たち全員のサイコパスな一面が、さらなるハラハラ感を生んでいる。象徴的なのが「最後の一言」。第四部のラストと最終第五部のラストで同じセリフが使われているが、第五章のエピソードでその表情をガラッと変える。そのえげつなさに背筋が凍る。
会話だけなのもあってダークなサスペンス作品でありながらサクッと読める一冊だった。それでいて細部まで作りこまれていて、最後まで読み手を離さない工夫がされている。文句なしで面白かった。ただ、サスペンスやミステリをじっくりトリックなどを考えながら読みたいタイプの人には向かないかもしれない。