「シリウス」池袋店のいつきは、たたき上げの店長だ。女性店長が増え、会議で臆せず発言するたび胸がざわつく。自分が必要とされていない不安に襲われるのだ。そんな中、偶然見つけた「キッチン常夜灯」で、常連の後輩たちと出会う。色鮮やかなトマトポタージュ、鶏モモ肉のロティ、ジロール茸のオムレツ。この店に来て、美味しい料理を味わえば、仲間と重ねてきた時間は無駄ではないと確信できる。
疲れた心を優しく包み込む物語。
深夜営業の変わったビストロ「キッチン常夜灯」のシリーズ4作目。
過去三作と同じくファミレス『シリウス』に勤務する女性が主人公。今回は四十中盤で最年長女性店長の鳥羽いつき。
これまでの三人は「女性活躍」という会社の方針で慣れない仕事を余儀なくされた女性社員の苦労と挫折と転機の話だったが、シリーズ四作目は一回り以上年上の女性が主人公とあって、会社への目線や不満の感じ方が全然違う。
好調期の『シリウス』を知っているだけに感じる、売上と効率ばかりが求め四苦八苦している会社へのもどかしさと期待値の低下だったり、自分が苦労して実力を付けてなった店長に「女性活躍」で実力不足のまま昇格している女性店長へのわだかまりと心配が同居するの複雑な心境だったり。
さらに自信の体力の低下や親の高齢化など四十路女性ならではの悩みもあり、自分と主人公と年齢が近いこともあって、過去作よりもより共感できて身につまされる話になっていた。
そして、共感することでより強く感じるのがキッチン常夜灯の温かい空気感と温かい料理のありがたみ。四十路の独身者にホッとする空間があるのはどれだけ大きなことか。
それと忘れちゃいけない、というか一番のメインなのが美味しそうな料理の数々。料理の説明から成り立ちや歴史、食べた客の感想まで隙なく丁寧に描写してくれるから、料理が想像しやすいのが嬉しい。酒飲みとして特に嬉しいのがおつまみ系の豊富さ。料理紹介だけで1ページ以上使うほど所狭しとアペロが並んでいたボジョレーヌーボーパーティは本気で羨ましかった。
悩み多き女性の心と健康も救う「キッチン常夜灯」。主人公の年代のおかげでいつも以上に疲れた心に効くいい物語だった。
