いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「君と花火と約束と」真戸香(ガガガ文庫)

君と花火と約束と (ガガガ文庫 ガま 10-1)

「ずっと君に会いたかったです」
高校一年の春、入学したての誠は初めて会った少女から突然の告白を受ける。名前は煌(あき)――彼女は一枚の古びた花火の絵を頼りに、誠に出会える日を心待ちにしてきたという。明らかな人違い、だけど誠は煌のために“本物の夏目誠”捜しを手伝うことに。季節は移ろい、絵の謎を解くために長岡を訪れる二人。そこで待ち受けていたのは、予想外の出会いと真実。長岡の夏空に花火が咲く時、僕らの“約束”は時すら越えて運命を変える――長岡まつり大花火大会を舞台に願いが繋ぐ感動の青春ストーリー。


日本三大花火大会の一つ、長岡まつり大花火大会を舞台にしたタイムスリップSF青春ストーリー。
昭和20年の空襲の1年後に開催された長岡復興祭から始まった長岡まつり大花火大会。その成り立ちと込められた想いを汲んだ、戦争の記憶と花火とボーイミーツガール。
タイムスリップは主人公が過去や未来に飛ぶのではなく、過去の人物がタイムスリップして現代に現れるタイプ。今を生きる主人公と終戦間際の時代から来た少女の出会いによって、戦争の悲惨さを強く印象付けると同時に、絶望の時代を生きる少女が未来への希望を見出す物語になっている。そして、それを繋ぐのが花火。
一つの花火を巡って過去の少女が託した想いと、本来繋がらないはずのバトンを受け取って必死になる今の少年。二つの想いが一つに重なる物語終盤、丁寧な心理描写と綺麗な情景描写で切り取った「花火と青春」なシーンがとても美しい。
と、物語の後半はとても良かったのだけど、そこに至る過程というか土台というか、SFの設定や時代考証の面で粗が目立つ。
特にタイムスリップ関連は考える事を放棄したのか、気を失っている間に事が終わっているご都合仕様。また、過去から来た少女が帰れるかもわからないのに、何故か物品を持ち帰れることを確信して行動する不思議。設定を説明しろとは言わないが、登場人物たちの行動に理由や説得力は欲しい。
もう一つ大きな問題点として、主人公とメインヒロインの関係性の薄さがある。
いくら曾祖母に色々聞かされて想像の中で美化されていたとしても、入学の日の出会い以降、数ヵ月に一度しか会わない相手を好きになるだろうか。それも逃げ腰及び腰が基本姿勢の情けない主人公を。一応最後にヒロインの心情の捕捉はされていたけど、ラストシーンを感動の再開にするには説得力が足りてない。なので青春SFものとしての出来は、お世辞にも良いとは言えない。
メッセージ性があって読後感が良かっただけに、書きたいシーンをより良く魅せるためにも、細かい部分をもっと詰めて欲しかった。惜しい一冊。