クイズ番組の決勝で三島の対戦相手は問題が一文字も読まれぬうちに回答し正解し優勝を果たす。不可解な「ゼロ文字正答」の謎を解明すべく調査する三島はやがて――。知的興奮に満ちた圧巻のエンターテインメント!
文庫化に際し短編小説「僕のクイズ」を収録! 解説は田村正資氏。
生放送のクイズ番組の決勝戦、同点で迎えた最終問題で主人公三島の対戦相手の本庄は、出題者が一文字も発しないまま正答を導き出し優勝した。果たしてはこれはヤラセなのか、根拠のある解答なのか。敗れた三島が「ゼロ文字解答」の謎に迫るミステリ。
本書は、収録本番に本庄と対戦している時の一部始終の記憶。対戦時に三島の脳裏に浮かんでいた三島本人の過去。本庄の過去の映像を見返して、彼の実力や思考を考察している現在。基本的にこの三つで構成されている。要するに物語は、三島という生粋のクイズオタクにして競技クイズの強者の頭の中で展開されている。
その脳内はまさにクイズ一色。クイズプレイヤーの生態とも言える内容だった。
クイズ大会の本番では回答者はいったい何を考えているのか、その思考回路をトレースしているような文章で、実際に自分がその場に立っているようリアリティがある。その間に、早押しクイズの技術論が説明されたり、問題作成時の暗黙のルールや出題者の間や唇の動きまで読むなどのクイズプレイヤー特有の癖などが出てきたりして、競技クイズへの解像度がどんどん高まっていくのを感じる。
また、主人公の過去語りもあるが、それはすべてクイズの問題が出題された時に記憶のサルベージ作業の過程として出てくる。本当にクイズの事しか考えていないだと、呆れるやら関心するやら。
そんな三島が深く長い思考の先に導き出した答えは・・・
ミステリとして答えに至るロジックは見事で、理屈としては納得できる。ただ、その答えは欲と俗世に塗れていて、三島というストイックにクイズに向き合う高潔な戦士に提示される答えとして、穢れているように感じてしまった。
でもまあ、後味苦めもミステリの醍醐味の一つか。他のミステリとは一味違った苦さを味わった気分。
クイズ好きとしてクイズ的思考を体験出来てとても面白かった。
映画になるみたいだけど、これは映像化して面白い作品なんだろうか?
