いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「Unnamed Memory -after the end- IV」古宮九時(電撃の新文芸)

Unnamed Memory -after the end-IV (電撃の新文芸)

「先に生活できる拠点を作りましょう」
旅を再開したオスカーとティナーシャは、外部者の呪具を探して第三の新たな大陸にわたることに成功した。情報のまったくない謎の大陸を探索する二人。だが、滅びた集落ばかりが残っており、なかなか手がかりは掴めない。そこにナフェアと名乗る不思議な少女が現れ――。
神話の時代に分かたれ、まったく異なる歴史をたどった五つの大陸。その新たなる二つの大陸を舞台に、呪具探索と破壊の旅の旅が始まる!


人類が滅亡した虚無大陸と、車ありテレビラジオありの現代風に発展した檻中大陸。前回の東の大陸からまた場所を移し、別の大陸に呪具の探索に出かけた逸脱者夫婦のお話。
まずは虚無大陸。廃墟を拠点にサバイバル生活をしつつ人類が滅んだ原因を探る。
住環境を整えたり、廃墟に残されたもので人々の生活や滅んだ理由を考察したり、これはスローライフしつつ島を冒険する無人島が舞台のアドベンチャーゲームだ。読んでいるだけで十分に楽しいし、意外?にも本人たちも楽しそう。オスカーは元々こういうの好きそうだけど、基本怠惰なティナーシャはこういうのめんどくさがるのかと思ってた。嬉々として廃墟のインフラ整備をする元女王様の図には笑ったけど。
この大陸は人類が滅んでいるので切ない話ではあるけれど、珍しく外敵がおらず最後まで穏やかだった。それに死別じゃなかったのも良かった。たまにはこういう回も良いよね。
次の檻中大陸は一転して現実風な世界。イメージ的には70~80年代のアメリカか。
虚無大陸の廃墟も広い意味ではそうだったけど、自宅改装を楽しんでいる姿が目に付く。二人は現代に生きていたらDIY好き夫婦になっていそうだ。それと猫。オスカー猫好きるだろうw なんにせよ、生活感のある日常シーンはやっぱりいい。もちろん会話込みで。
それにしてもファンタジー世界の住人ながらオスカーは車が似合うなあ。ティナーシャは、、、まあ、うん。でも、二人で古ぼけた青いバンで取り留めない会話をしながら長閑な田舎町をドライブ……いいね。いい絵が浮かぶ。但し、状況が近隣国との小競り合いがが絶えず国名がコロコロ変わるような世界情勢で、二人が選んだ職が運び屋業なので平和とは程遠いのだけど。まさかこのシリーズで銃器有りのカーチェイスを読むことになろうとは。
そして今回は呪具の探索も順調。なかなか進まないと思っていたけれど、なんだかんだで残りが少なくなってきた。しかし、終わりが見えてきたことで別れの気配も。
終盤はオスカーが静かに取り乱す様子にオスカーでもこんなになるんだな、と。これまではティナーシャの方が精神的に弱そうな感じだったのに。弱ったオスカーの姿に、愛の深さと逸脱者の生の過酷さが感じられて胸が締め付けられる。特に今回は二人でいる穏やかな時間が多かったので余計に。
次回はまた出会うところからかな? さっさと出会っていつもの夫婦漫才をしてほしいものです。