いつも月夜に本と酒

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「新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙」支倉凍砂(電撃文庫)

新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 (電撃文庫)
新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 (電撃文庫)

聖職者になる夢を志す青年コルは、恩人のロレンスが営む湯屋狼と香辛料亭』を旅立つ。ウィンフィール王国の王子に誘われ、教会の不正を正す手伝いをするのだ。そんなコルの荷物には、狼の耳と尻尾を有した美しい娘ミューリが潜んでおり――?
かつて賢狼ホロと行商人ロレンスの旅路に付き添った放浪少年コルは青年となり、二人の娘ミューリと兄妹のように暮らしていた。そしてコルの旅立ちを知ったお転婆なミューリは、こっそり荷物に紛れ込んで家出を企てたのだ。
『狼』と『羊皮紙』。いつの日にか世界を変える、二人の旅が幕を開ける!

ロレンスとホロの旅の終わりから十余年。本編後半で二人と旅を共にした少年コルと二人の娘・ミューリの、二人の旅を描く物語。



銀髪美少女に「兄様」と慕われて言い寄られる。夢の様なシチュエーションだが、当の本人はそれを享受できないのは世の常か。まあ、受け入れてしまったら物語がそこで終わってしまうのだけど。
そんなうらやまけしからん主人公・コルはあれから十数年経ってすっかり大人に……成ってないな。純朴で実直なまま大人になったような青年だ。むしろ色々酷い目にあっていた少年時代の方が警戒心があったような。
お相手のミューリもホロと違って見た目=実年齢のお転婆娘で何をするにも危なっかしい。
そんな二人が一緒に旅をしたらどうなるか。それはもうハラハラドキドキの連続に決まってる。
本編の旅路では、ロレンスはホロにはやり込められていても一商人としての機転やずる賢さを持っていたし、戦うにしても逃げるにしてもホロがいれば何とかなるという安心感があった。コルとミューリの旅はそのロレンスとホロの旅から安心とか保険をごっそり抜き取ったような物語だった。まだミューリの方が人を見る目があるってどういうことなの、コル君。
一方で、甘さに関してはこちらも負けてない(175頁挿絵はご馳走様でした)。本編の二人が完熟の果実の甘さなら、今度の二人はフレッシュでまだ青臭さの残る甘さと言ったところ。そういう意味では本編よりラノベらしくなったのかもしれない。
コルの夢が叶うのか、ミューリの夢が叶うのか。旅路の先は全く読めないけれど、これから先もロレンスとホロの代わりに親目線で二人の成長を見守る物語になりそうで楽しみ。