いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「閻魔堂沙羅の推理奇譚」木元哉多(講談社タイガ)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 (講談社タイガ)
閻魔堂沙羅の推理奇譚 (講談社タイガ)

俺を殺した犯人は誰だ? 現世に未練を残した人間の前に現われる閻魔大王の娘――沙羅。赤いマントをまとった美少女は、生き返りたいという人間の願いに応じて、あるゲームを持ちかける。自分の命を奪った殺人犯を推理することができれば蘇り、わからなければ地獄行き。犯人特定の鍵は、死ぬ直前の僅かな記憶と己の頭脳のみ。生と死を賭けた霊界の推理ゲームが幕を開ける――。

第55回メフィスト賞受賞作



自分を殺した犯人は誰? あの世の入り口で閻魔大王の娘と10分間の推理勝負。
という奇抜でアクの強そうな、何より面白そうな舞台設定でワクワクして読んだら、ごくごく普通にいい話が出て来て困惑している。いや、悪くはない。悪くはないんだが……。
また、ミステリとしては短編連作で一話一話が短いのもあって、かなり易しめ。
その話の主人公が思考を整理するところは面白いが、ヒントの部分が逆にミスリードを疑いたくなるくらいに露骨なのはマイナス点。それに「種明かしで驚かされて、読み返して納得して、うなる」のがミステリの醍醐味だと思っているので、その基準に照らし合わせると非常に物足りない。
結局、作中で最も印象に残るのが、閻魔様の娘沙羅が死者(挑戦者)の生前の為人を評する時の辛辣さだったという。沙羅のド直球な正論と身も蓋もない感想で心の傷を抉ってくるところに、M心を刺激されるのがベストな楽しみ方かもしれない。まあ、自分は罵られれば純粋に腹が立つタイプなので、残念ながらそういう楽しみ方は出来ないのだが。むしろ、このキャラを生かすためにも、話をもっと意地悪く作った方が良かったような。
でもあれよね、失言と掟破りを繰り返した超絶美少女沙羅ちゃんは、この後お父様やお兄様にこっ酷く叱られて、半べそをかくわけだ……あ、それはいいな。←ドS