いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



二四〇九階の彼女 (電撃文庫)

二四〇九階の彼女西村悠電撃文庫
オンライン書店ビーケーワン:二四〇九階の彼女

無数の階層が連なる【塔】のかたちをした世界。各階層は神の代行機械であるアントロポシュカによって管理されていた。しかし管理する階層に住む人間が【幸せ】に暮らせる世界を作る、という命題を与えられ階層世界を運営してきたアントロポシュカたちは、永い時間を経て、その多くに狂いを生じていて……。
【幸せ】に狂った世界の中を、少年・サドリは相棒のカエルとともに海を目指して塔を降りてゆく。かつて交わした「彼女」とのただひとつの約束を果たすために。
優しくて残酷な、神様と世界のお話。

これを読んで真っ先に思い浮かんだのが「キノの旅」じゃなくて「食卓にビールを」の廃墟篇をだったのは・・・はい、恐らく私だけですね。


旅ものの短編連作。
キノの旅のように人間+喋る非人間の二人旅で食卓にビールはありますか☆廃墟篇のような積み重なった世界を1階ずつ移動していく物語(後者がマニアックで分からないというツッコミはなしの方向で)世界観は全然違うけど、世界のつくりというか世界の中の隔離されたエリアという点は捨てプリに近いかな。


とにかく感情で動くサドリと冷静だけど偉そうなカエルのやり取りが最大の魅力。毎回、サドリに振り回されるカエルという構図がキノの旅に近い設定ながらも全く違った雰囲気があって良かった。
ただ物語の方は切なくて痛々しい話ばかり。あらすじの最後に「優しくて残酷な、神様と世界のお話」とあるが、優しさが足りない印象。希望を見るには酷な状況ばかりな気がする。
もうひとつ気になるのは、第二話の「九四三階の戦争」の中のカエルのセリフ『時は先に進む。振り返らぬ』がこの作品の言いたいことであり、心に残るいいセリフだったけど、それに反して話数が進むと過去に遡っていく構成なのはなんでなんだろう。
次があるならもう少し優しい物語も読んでみたい。それとキノと違って終わりが見えているだけに(かなり遠いけど)結末を見てみたい。